ニンジン

 子どもの嫌いな野菜といえば、ニンジンとピーマン。しかし、2005年にカゴメ株式会社が行った調査によると、ニンジンは“好きな野菜”の第3位にランクイン。細かく刻んだり、すりおろしたり・・・お母さんの努力と愛情が伝わってくるような結果です。と思いたいのですが、子供のころのニンジンと、今のニンジンの味、違っていますよね。もしかしたら、この結果、お母さんより、生産者の品質改良の努力のおかげかもしれません。
 β-カロテンを豊富に含む、このニンジン。漢方薬や薬用酒、サプリメントなどに用いられる生薬のニンジンとは、まったく別のものです。野菜のニンジンはセリ科。生薬のニンジン(オタネニオンジン、高麗ニンジン、薬用ニンジン)はウコギ科。先に日本に伝来していたオタネニンジンと形が似ているところから、当初はセリニンジンと呼ばれていました。

 それが今では、ニンジンといえば野菜のニンジンを指すことがほとんどですが、オタネニンジンのもつ作用は実に多彩。滋養強壮、健胃、消化促進、強心、強肝、消炎、抗アレルギー、抗ストレス、免疫機能強化・・・。 さらに細かくみていくと、中枢神経系に対して興奮的に働くものと抑制的に働くもの、血圧を上昇させるものと低下させるものなど、相反する働きを示す成分が含まれていることがわかりました。しかもこれらは、まったく逆を向いているのではなく、からだの機能を活発にする一方で大脳の興奮をしずめて心を安定させるというように、互いに協力しながら作用を発揮しているのではないかと考えられています。  こうした複雑な働きをすることが、古くから「万能薬」ともいわれてきたゆえんなのかもしれませんが、実際は、注意が必要なケースも少なくありません。

 CoQ10は、メバロン酸を経て合成されますが、これはコレステロールの合成経路の一部と同じ。このため、メバロン酸の合成を阻害する薬剤(高脂血症治療薬のうちスタチン系薬剤と呼ばれるプラバスタチン、シンバスタチンなど)を服用していると、コレステロールだけでなく、CoQ10の濃度も低下することが知られています。
 スタチン系薬剤の副作用として、筋肉痛や下肢のむくみなど、その発現には、CoQ10の減少による筋肉のエネルギー低下が関与しているとも考えられます。ということは、サプリメントなどでCoQ10を補給することで、副作用を防ぐことができる―そんな可能性も示されています。