DHA、EPA

 「野菜は1日350g」。最近は、野菜ジュースのCMなどでもよく耳にするようになりました。厚生労働省が推進する「健康日本21」の中で、健康的な生活を送るためにと推奨されている野菜の摂取量が、350g以上なのです。
 しかし、地球上には野菜をほとんど摂らない人たちもいます。例えば、厳寒の地に住むイヌイット。食事は動物と魚中心。当然、脂肪摂取量は多いはず。にもかかわらず、心筋梗塞などの心疾患や血栓性疾患は少なく、血中の脂質レベルも低いことがよく知られています。
 なぜか。そのカギを握る物質といわれるのが、DHAとEPAです。これらは、イヌイットが常食とするアザラシや、アジやイワシなどの青魚の魚油中に含まれる不飽和脂肪酸。人間の体内にも存在する必須脂肪酸ですが、血中の脂質を低下させ、血液を固まりにくくする作用があることがわかったのです。最近はサプリメントだけでなく、「中性脂肪が気になる方」の特定保健用食品としても用いられるようになりました。
 さらにDHAは、脳に多く存在することから、「記憶力をよくする」「脳の働きをよくする」といった作用があるのではないかともいわれています。

 生活習慣病の予防に、脳の老化防止に、期待が集まるDHA・EPAですが、服用中の薬剤がある場合は注意が必要です。
 血液を固まりにくくする薬(ワルファリン、アスピリン、チクロピジンなど)との併用では、薬の作用が強まり、出血しやすくなる・出血が止まりにくくなるといったことが起こる可能性があります。降圧薬やコレステロールを低下させる薬剤の作用を強めるとの指摘もあります。インスリンや経口血糖降下薬との併用については、「作用を強める」「影響しない」という2つの意見がありますが、薬をきちんとのむことで安定していた症状が、サプリメントによって変動するということもあるかもしれません。
 通常の食事に青魚を取り入れていただくことはよいのですが、サプリメントでの補給を考えている場合は、摂取前に、医師や薬剤師に、必ず相談を。なお、アメリカFDA(食品医薬品局)では、DHAとEPAをサプリメントから摂取する場合は、1日2gを超えないことが望ましいとしています。

 イヌイットの話から、DHAやEPAを摂ればいいのかと思った野菜嫌いの人がいるかもしれません。でも、その環境に適応するため、長い年月の末、培われた食習慣。自然に恵まれた日本では、さまざまな食材を食べることが最も適しているのかもしれません。