ベニコウジ

 沖縄の伝統的食品の一つ、「豆腐よう」。沖縄独特の固くて重い沖縄豆腐(島豆腐)を、泡盛と麹に漬け込んで熟成させたもので、琉球王朝の時代に中国から伝わり、位の高い人たちの間で、珍味として、また貴重な保存食として重宝されたといわれます。

 豆腐ようを初めて見たときに驚くのが、その外観。赤くて、とろっとした液体をまとっています。この色は、ベニコウジという種類の麹菌が作り出す天然の色素によるものです。
 このベニコウジ、日本では、豆腐ようのほか、天然の色素として用いられる程度で、あまり使われることがありませんでしたが、最近は、サプリメント売り場で目にするようになってきました。それは、ベニコウジに含まれる成分に、コレステロールを低下させる働きがあることがわかったからです。

 「ロバスタチン(モナコリンK)」。ベニコウジ中に発見されたこの成分には、体の中でコレステロールが作られるときに働く酵素(HMG‐CoA還元酵素)の働きを抑える作用があることが明らかになりました。この結果、肝臓でコレステロールが作られるのを抑え、血液中のコレステロールを低下させるのです。このロバスタチン、海外では、高コレステロール血症の治療に用いられています。
 日本では、ロバスタチンは治療薬として使用されていませんが、プラバスタチン、シンバスタチンなどロバスタチンと同じ作用を持つ薬が高脂血症治療薬として使用されています。これらの薬はその名前に「スタチン」という言葉が含まれるため、「スタチン系」薬剤と呼ばれています。

 ベニコウジのサプリメント中のロバスタチンの含有量は少なく、医薬品の治療のかわりにはなりませんが、コレステロールが若干高めの方が予防的に使用するのは有用だと思われます。もちろんすでにスタチン系薬剤を服用している方は、その併用は避けるべきです。

 治療中の疾患や服用中の薬剤があるときのサプリメントの摂取は、特に慎重に。治療を受けていない場合も、購入されるときには、薬剤師に相談を。