ペプチド

 ゴマ、いわし、かつお節、わかめ、海苔。これらに共通するものは何でしょうか。
 からだによさそうな食べ物?長寿食? それも、はずれではないのですが、残念ながら、正解とはいえません。
 それぞれの食べ物のあとに「ペプチド」という単語をつけてみると。ゴマペプチド、いわし(サーディン)ペプチド、わかめペプチド・・・。ドラッグストアやスーパーなどの健康食品コーナーの、「血圧が高めの方に」という表示が認められた特定保健用食品の関与成分です。
 ペプチドは、たくさんのアミノ酸がつながったタンパク質に酵素を作用させて、数個ずつのアミノ酸に分解したもの。ゴマペプチドであれば、ゴマのタンパク質を分解して得られた、アミノ酸の小さなまとまり、ということになります(カルピスの「アミールS」は、乳酸菌を発酵させて作った酸乳中に含まれるペプチド)。

 さまざまな研究の結果、これらのペプチドには、血圧の上昇を抑える働きがあることが明らかになりました。私たちのからだの中には血圧を維持するためのシステムがあり、絶えず機能しています。その中の“ある酵素”の働きを抑えることで、アンジオテンシンⅡと呼ばれる物質(血管を収縮させて血圧を上げる働きをする)が作られないようにし、血圧の上昇を抑えます。これを、一言で言うと、「アンジオテンシン変換酵素阻害作用」。通常は「ACE阻害作用」といわれます。
 この考え方は医療現場でも応用されており、「ACE阻害薬」(医療用医薬品のレニベース、カプトプリル、タナトリル、ノバロック、アデカットなど)は高血圧治療に不可欠なものとなっています。

 ですから、ACE阻害薬を服用中の人が、同じ働きを有する成分を含む特定保健用食品も摂取すると、その作用が強まることが考えられます。作用が強くなる?よく効くということ?と思うかもしれませんが、血圧が下がりすぎて、ふらふらしたり、めまいがしたりすることもあり、とても危険。ACE阻害薬の副作用(特に空咳)が出やすくなるおそれもあります。ACE阻害薬以外の降圧薬との併用も避けるようにしましょう。

 2006年の新語・流行語大賞トップテンにも入った「メタボリックシンドローム」。「メタボ」と略して言われることも増え、広く知られるようになりました。となると、トクホマークのついた商品にも関心が集まりそうですが、特定保健用食品は「気にはなるけど、治療するまでには至っていない」方を対象としたものです。すでに治療を受けている場合は、医師・薬剤師に相談してから。