ビタミンD

 くる病って聞いたことがありますか。この病気を治すためにタラの肝油が使用され、その後なぜ肝油が効くのか、そんな研究から発見されたのがビタミンDです。50歳以上の方なら、子供のころ目玉肝油をのんだことを懐かしく思い出されるかも知れませんね。

 ビタミンDは、きのこ類(きくらげ、しいたけなど)や魚肉(うなぎ、かれい、かつおなど)、などに多く含まれます。15歳以上の男女での摂取目安量(良好な栄養状態を維持するのに十分な量)は、1日5μg(0.000005g)とごくわずか。普通に食事を摂っていれば、この基準をクリアすることは、それほど難しいようには思えません。
 ところが、血液中のビタミンDの量を調べたところ、40代以上の女性の約5割、80代以上の女性の7割近くに、ビタミンDの不足が認められたという報告があります。
 食べ物に含まれるビタミンDは、腸で吸収された後、肝臓や腎臓で「活性型ビタミンD」となり、作用を発揮します。ビタミンDは皮膚でも合成されています。私たちの皮膚にはプロビタミンD(ビタミンDの前駆体)という物質が存在していて、日光(紫外線)にあたることでビタミンDに変わるのです。
 体内でも合成されるので、今までビタミンDの不足は問題にならないのではとされていたのですが、年齢を重ねると体内でビタミンDを作り出す能力が低下します。夜型の生活や長期の入院、寝たきりなど、日光にあたる時間が極端に少ない人、日焼け止めクリームを常用している人。こういったことがビタミンDの不足につながっているのではないかと考えられています。

 ビタミンDは、血液中のカルシウムやリンの濃度を調節する役割があります。腸管でのカルシウムやリンの吸収を助けています。カルシウムをたくさん摂っても、ビタミンDがなければ吸収されません。この状態が続くと、骨がもろくなってしまうのです。
 骨を丈夫にしたいと考えている方、骨粗鬆症を予防した方。カルシウムだけでなく、ビタミンDの存在も忘れずに。バランスのよい食事はもちろんですが、1日に10分程度、日光に当たることも心がけましょう(長時間、強い日差しに当たると紫外線の害も心配ですから、ほどほどに)。
 活性型ビタミンDは、このような働きを目的に骨粗鬆症などの治療に使われています。この薬をのんでいる方は、食事以外からのカルシウム摂取は控えるようにして下さい。カルシウムが吸収されすぎて、からだのかゆみや吐き気、めまい、便秘などの症状がみられることがあります。何事も過ぎたるは及ばざるが如しです。
 美白がはやりの昨今、紫外線カットに必死のあなた、皮膚でのビタミンDの合成はあきらめて。食事や、サプリメントでの補給についても、ぜひ、薬剤師に相談を。