カプサイシン

 自分の好みの辛さを選べるカレー屋さん、よく見かけるようになりました。ある店では、トウガラシパウダーを振り掛ける回数によって、辛さを調節しているとか。「辛さ5倍」「10倍」「20倍」(夏季限定で30倍も)で人気のレトルトカレーも、トウガラシと胡椒を中心とした香辛料の量で辛さを決めていると聞きました。数多い香辛料の中でも、トウガラシは中心的な存在であることがわかります。

 トウガラシの辛味の主成分は、カプサイシン。皮膚に温感刺激を与えることによって血行をよくしたり、痛みやかゆみを一時的にやわらげたりすることから、医薬品の成分として、温湿布や塗り薬などに配合されてきました。
 でも、近ごろは、“燃焼系”のダイエットサプリメントとして注目されることが多いようです。確かにトウガラシを食べると、からだがカッと熱くなり、汗もかきます。いかにも「脂肪が燃えている!」「代謝がアップしている!」という感じがするのですが・・・。 辛くない新種のトウガラシ「CH-19甘(あま)」から抽出されたカプシエイトという成分に、脂肪燃焼作用、体温上昇作用、体重・体脂肪減少作用などがあることが明らかになり、すでに商品化もされています。そのメカニズムはまだわかっていませんが、辛さの刺激だけがダイエットに役立つというわけでもなさそうです。
 カプサイシンには胃を刺激して食欲を促す作用もありますが、大量に摂取すると、胃炎などの消化管障害を起こすことがあります。また、カプサイシンはそのままのかたちで便中に排泄されるため、肛門部に強い刺激を感じ、つらい思いをしてしまうこともあります。胃腸の弱い人、痔疾のある人は、くれぐれも摂り過ぎないように。
 実際に問題になったことはないようですが、カプサイシンには血行を改善する作用があることから、血液を固まりにくくする薬剤との併用では、出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなったりすることがあるのではないかと考えられます。喘息の治療薬として使われるテオフィリンの吸収を高め、作用を増強するとの報告もありますが、食事の中で、香辛料として用いる程度であれば、問題はないと思われます。

 「激辛」という言葉もすっかり定着。もっと辛いもの、さらに辛いものを求める傾向も強いようですが、少しの量でピリッとした存在感を示すトウガラシ本来の味わい、これもまた捨てがたいですよね。