植物ステロール

 「植物ステロール」。これと似た言葉を思い出しませんか。そうです、「コレステロール」。この二つは名称だけでなく、その構造もよく似ているのですが、植物ステロールは、「コレステロールが高めの方に」すすめられる特定保健用食品の関与成分としても利用されています。
 植物ステロールは、穀物や野菜、果物などに広く含まれる物質で、シトステロール、カンペステロール、スティグマステロールなどの総称です。日本人の場合、1日に約200mgの植物ステロールを食事から摂っているといわれています。
 コレステロールに似た形の物質が、植物の中にもあるというのは、ちょっと不思議な感じもしますが、植物ステロールは、細胞を形づくり、保護するために不可欠な存在です。
 もちろん、コレステロールも、私たちのからだにとっては必須の成分。細胞膜の基本成分としてからだを支え、細胞膜を介しての情報伝達を助け、さらには、消化を助ける胆汁酸や免疫機能などさまざまな機能に関与する副腎皮質ホルモンの原料にもなるなど、大切な働きをしています。それなのに、最近ではすっかり“厄介者”のようなイメージが定着してしまいましたが、コレステロールには罪はないんですよね、問題なのは、コレステロールの摂り過ぎですから・・・。

 コレステロールは、小腸で胆汁酸ミセル(油滴のような小さな分子が集まったもの)に溶けて吸収されます。しかし、そこに植物ステロールが一緒に存在すると、形が似ているために植物ステロールの一部が胆汁酸ミセルに取り込まれます。あぶれたコレステロールは吸収されずに、排泄されますから、結果的にコレステロールの吸収や血中コレステロール値の上昇が抑えられると考えられています。
 植物ステロールは、コレステロール以外の脂溶性(油に溶ける性質をもつ)物質の吸収も抑えると考えられますから、植物ステロールを長期にわたって摂り続けると、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)やβ-カロテンが不足してくることがあるかもしれません。このため、β-カロテンについては、植物ステロールを摂る場合は、野菜や果物を積極的に摂るように、との注意が呼びかけられています。
 また、脂溶性の薬剤(イトラコナゾール、グリセオフルビンなど)や低用量ピルの吸収量が減って作用が弱まるおそれもあり、特に低用量ピルの場合は、望まないかたちでの妊娠につながる心配もあります。植物ステロールを含む特定保健用食品は、食用油やマーガリンのように、一般の食品として利用しやすいものがほとんどで、便利ではあるのですが、それだけに注意も必要です。