トチュウ

 1990年代後半、ダイエットによいとしてトチュウ茶がブームになったことがありました。一時は品薄になるほどだった人気も、数ヶ月ほどで下火に。ぱったりと売れなくなったトチュウ茶の箱を見て、こう言った人がいました、「途中でやめちゃう人が多いから、“トチュウ茶”?」。 言い得て妙。でも、笑えるような笑えないような・・・。もちろん、こうしたことは、トチュウに限ったことではありませんけれどね。

 トチュウが地上に誕生したのは、恐竜時代。厳しい氷河期にも絶えることなく、現代に至ったといわれています。原産地の中国では、トウチュウカソウ(冬虫夏草)やニンジン(人参)、シャクヤク(芍薬)などとともに、長く服用しても副作用が少ない「上品(じょうほん)」に分類され、不老長寿の薬として古くから珍重されてきました。
 古い書物には、「腰脊痛を治し、精気を益し、筋骨を堅くし、志を強め・・・」という記載があり、病気で歩けなくなった少年が、トチュウをのんだら歩けるようになったという逸話も残っているなど、主に手足の痛みや麻痺、腰痛、神経痛の軽減によいとされてきました。しかし、近年は、高血圧や高脂血症などの予防にも効果があるのではないかとして注目されています。
 特にトチュウの葉に含まれるゲニポシド酸は、「血圧が高めの方に」すすめられる特定保健用食品の関与成分ともなっています。ゲニポシド酸は、からだをリラックスさせる方向に働く副交感神経を刺激して血管の緊張をゆるめ、血管を広げて血圧を下げると考えられています。これは、血圧によいとされる他のトクホ成分(ラクトトリペプチド、ゴマペプチドなど)とはまったく異なるメカニズムで、トチュウ独特のものといわれています。
 このほか、まだ実験の段階ではありますが、体重や内臓脂肪の増加が抑えられた、排便や排尿の回数が増加したなどの結果も報告されており、トチュウのもつ多彩な作用の解明が待たれるところです。
 現在までのところ、トチュウの副作用や薬剤との相互作用について、問題となるようなものは報告されていません。しかし、薬に取って代わるものではなく、すでに高血圧や高脂血症などで薬物による治療を受けている場合、薬の効果や症状などに影響が及ぶ可能性も考えられます。「試してみたい」と思われる場合は、摂取の前に医師・薬剤師に相談を。トチュウを摂取している場合でも、「食事に気をつけ、運動を心がける」という大原則は、お忘れなく。

メタボリックシンドロームが大きな問題になる中で、再び脚光を浴びつつあるトチュウ。厳しい時代を生き抜いてきたたくましさにも、ちょっとだけあやかりたいような気がします。

 アロエの絞り汁は、やけどや切り傷などの手当てにも用いられます。民間療法ではみずむしに使われることもあるようですが、かえってひどくなってしまうケースもあり、アロエの成分による接触皮膚炎も報告されています。使用はごく軽い傷に限るようにし、使用中に痛みなどの刺激を感じた場合は、使用をやめ、すぐに患部を水かぬるま湯で洗い流すようにしましょう。