クランベリー

 秋の収穫を喜び、神に感謝を捧げるアメリカの感謝祭(11月の第4木曜日。カナダでは一足早く10月の第2月曜日)。この日のメインディッシュは、大きな七面鳥の丸焼きですが、それに添えられている赤いソース、ご存知ですか。
 これは、クランベリーに砂糖を加えて煮詰めたもの。甘酸っぱいソースと七面鳥?ちょっと不思議な取り合わせですが、食べたことがある人に聞くと、「意外といける」。ハムサンドやハムサラダに、このソースを少したらしてもおいしいそうです。

 クランベリーは、北米大陸原産のツツジ科の植物。ツルコケモモとも呼ばれ、9月から10月にかけて、小さくて真っ赤な果実をつけます。強い酸味をもつことから、そのままで食べられることはほとんどなく、ジュースやゼリー、ジャムなどとして食されることが多いようです。
 1800年代には、長い航海の際、ビタミンCの補給源として用いられたとも伝えられますが、最近は、尿路感染症によいとして、日本でも広く知られるようになりました。
 腎臓でつくられた尿は、尿管、膀胱、尿道を通って排泄されます。この間に細菌が入り込んで増殖すると、発熱や排尿時の痛み、頻尿、残尿管といった不快な症状がみられるようになります。これが、尿路感染症。
 クランベリーに含まれるプロアントシアニジン(ポリフェノールの一種)は、細胞膜の合成を阻害することで殺菌作用を示し、さらに、細菌が細胞の表面に付着しないようにすることで、感染を予防すると考えられています。通常、細菌は中性~アルカリ性で繁殖しますが、クランベリー中のキナ酸は体内で馬尿酸という酸性の物質に変換されるため、尿が酸性に保たれ、細菌の増殖も抑えられるといわれています。
 これらの作用により、尿路感染症の予防については、ある程度の“効果”が期待できるとされていますが、かかってしまった場合には、医療機関を受診して、適切な抗菌薬などで早めに治療することが大切です。
 また、クランベリーにはシュウ酸が多く含まれることから、結石の原因となったり、腎機能に影響を及ぼしたりすることが考えられます。腎臓の悪い人、結石になったことのある人は、摂取を避けたほうがよいと思われます。近年、CYP2C9という薬物代謝酵素の働きを阻害することから、ワルファリン(抗凝固薬)との併用は避けたほうがよいことも知られるようになりました。

 ネイティブアメリカンにも、食用として薬として、利用されていたクランベリー。科学的な研究も進めば昔からそうだったといた経験からの使用だけではなく、より安全で、上手な使い方ができそうです。