燕龍茶(ヤンロンチャ)

 北京オリンピックの5つのマスコットは、パンダの「ジンジン」、チベットカモシカの「インイン」、魚の「ベイベイ」、炎の「ホアンホアン」、そしてツバメの「ニイニイ」。ニイニイは、北京の伝統的な沙燕風筝(ツバメ凧)をモチーフとしたもので、北京とその周辺の古い地名である「燕」も表しているとのことです。

 その「燕」という文字を冠した燕龍茶。「龍」は中国全体を意味するそうで、いかにも中国的という感じの名前ですが、実は、この名前をつけたのは、日本人。1990年台に初めて「燕龍茶」という商品で発売され、現在では日本の会社の登録商標ともなっています。
 しかし、もともと中国で飲まれていたお茶ということに変わりはありません。原料は、キョウチクトウ科のラフマ(羅布麻)という植物。ちょっと不思議なこの名前は、タクラマカン砂漠のロプノール湖(中国語で、羅布泊)に由来するといわれています。夏の初め、ラフマは薄紅色の可愛らしい花をつけますが、その一方では、過酷な自然の中でも生き延びる力強さも持ち合わせています。
日本での歴史はまだ浅いのですが、近年、燕龍茶が、「血圧が高めの方」に適した特定保健用食品となりました。
 関与成分は、燕龍茶エキスに含まれるハイペロサイドやイソクエルシトリンなどのフラボノイド。血管の平滑筋に作用して、血管の緊張をやわらげ、拡張作用を示すことによると考えられています。中国でも、羅布麻茶が、高血圧の治療に使われることもあるそうです。
 燕龍茶と同じような成分を含むセント・ジョーンズ・ワートでは、多くの医薬品との相互作用が知られているため、燕龍茶について、いろいろな実験が行われています。しかし、現在までのところ、問題となるような相互作用は報告されてしません。
 でも、現在、降圧薬を服用中の方では、血圧が下がりすぎてしまったり、血圧のコントロールがうまくいかなくなったりすることが考えられます。また、商品によって、含有量にバラつきはあるようですが、他のお茶に比べて多くのミネラル(カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛など)を含むことも知られています。健康な方にはミネラルの補給にもなるのですが、骨粗鬆症治療薬のビスホスフォネート系製剤、抗生物質・抗菌薬などと一緒に飲むと、薬の吸収が妨げられることが考えられます。まずは、薬をしっかりのんで。2~3時間たってから、燕龍茶を味わって飲んで下さい。

 何かと話題の絶えない中国でのオリンピックですが、どの国の、どの選手も、ベストコンディションで当日を迎えられますように。