カカオ

 「非常に苦いチョコレートです。お口で少しずつ溶かしながら、又は甘い飲み物と一緒に召し上がることをお勧めいたします」。明治製菓「チョコレート効果 カカオ90%」には、こんな注意書きが添えられています。
 発売前には社内から、「こんなチョコ、本当に売ってもいいの?」との声もあったそうで、実際に食べてみたら、本当に苦い!その意見に、心から納得してしまいました。

 そんな危惧をよそに、カカオ分の高いチョコレートは好調な売れ行きを見せているようです。
 数年前には、チョコレート・ダイエットも話題になりました。もちろん、チョコレートさえ食べればいいわけではなく、このダイエットには2つの大原則があるそうです。1つは、カカオ分70%以上のチョコレートを、1日50g食べること。もう1つは、3度の食事をバランスよく摂ること。
 それならわざわざチョコレートを食べなくても、という気もしますが、カカオがヨーロッパに伝わって間もない1600年代、カカオに砂糖やバニラ、シナモンなどを加えた飲み物は、「疲れがとれて、元気が出る」「気持ちが落ち着く」などとして、貴族や位の高い僧侶たちに珍重されました。 このような作用はおそらく、カカオに含まれるテオブロミンやカフェインの作用によるものと考えられています。いずれも「キサンチン系」に分類される成分で、中枢興奮作用や強心作用、利尿作用などをもっています。カカオの木の学名(テオブロマ)にも由来するテオブロミンは、カフェインに比べて作用がおだやかで、持続性があるといわれています。
さらに、近年は、カカオ中のポリフェノール、カカオマスポリフェノールにも注目が集まっています。活性酸素の働きやコステロールの酸化を抑えてがんや動脈硬化などを予防するとされ、赤ワインやお茶に含まれるポリフェノールよりも、吸収されやすいともいわれています。
 しかし、高カカオをうたうチョコレートでは、糖分を多く含んでいたという調査もあります。キサンチン系のテオフィリン、アミノフィリンなどは喘息の治療に用いられることも多く、カフェインは多くの薬剤と相互作用を起こすことも知られています。
 疲れたときに、チョコレートを一口、という程度なら問題になることはないでしょうが、カロリーを制限している人、キサンチン系製剤など、服用中の薬剤がある人などは、摂りすぎないように注意したほうがよいでしょう。

 セントバレンタイン。男性も女性も、チョコレートへの関心が高まるこの時期。自分好みのおいしいチョコレートを見つけて、一口一口味わいながら、楽しむのがよいのかもしれません。