アガリクス

 3100人中1382人、約44%のがん患者さんが、医療機関での治療のほかに、何らかの代替療法を利用しているというデータがあります(2005年 厚生労働省「わが国におけるがんの代替療法に関する研究」班の調査)。代替療法としては気功や鍼、灸などもあるのですが、「利用している」と答えた人の96%もの人が「サプリメント・健康食品」を挙げ、さらにそのうちの6割が、アガリクスを利用していると答えていました。

 アガリクスは、ヒメマツタケ、カワリハラタケとも呼ばれるブラジル原産のキノコ。食べることもできますが、腐敗しやすく、食用としては普及しませんでした。しかし1980年代、免疫を活性化し、がん細胞の増殖を抑える作用が期待されると発表され、注目されるようになりました。
 確かに、動物実験では、そのような作用を裏づけるデータが複数みられます。ヒトに使用した場合も、抗がん剤の副作用(吐き気、脱毛、倦怠感など)を軽くしたとの報告はありますが、がんそのものに対する有効性については、一定の見解は得られていないのが現状です。
 有効成分はβ-グルカンが有力と思われますが、産地や栽培方法などによってその含有量は大きく異なります。その量と作用の関連についても不明な点が多く、今後の科学的な検証が待たれます。
 2006年、厚生労働省は、あるアガリクス製品で発がん促進作用がみられたとして、メーカーに対し、商品の回収と販売停止を要請しました。しかし、これは、ラットに、通常摂取する量の5~10倍ものアガリクスを与えた試験での結果であり、1社の製品でだけでした。しかしこのデータのマスコミ報道からアガリスクの使用量は激減し、アガリスクのブームが去った感があるアガリスクですが、実際には、「アガリクスでがんになる」ということにはなりませんので、冷静に対応したいものです。
 しかし一方で、「アガリクスは食べられるキノコだから、副作用はない」といわれることもあるのですが、アガリクスによると思われる肝障害は、決して少なくありません。肝障害の初期症状としては、からだがかゆくなる、白目の部分が黄色くなる、尿の色が濃くなるなど。摂取中は、体調の変化に気をつけ、何かあったときは摂取をやめて医師・薬剤師に相談するようにしましょう。

 「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班は、代替療法を選択する前に、次の点を確認してほしいと呼びかけています。あなたのからだをよく知っている医師に相談しましたか。十分情報を集めましたか。その代替医療を受けることは、あなたにとってどういうことですか。