カバ

 漢字で書くと、「瓦努阿圖」。北京オリンピックの開会式では、日本の2つ前に入場したバヌアツ共和国。人口は20万人ほど、南太平洋の小さな約80の島々から成る国で、総面積は新潟県と同じくらい、バンジ-ジャンプ発祥の地ともいわれています。 この国の伝統的な飲み物が、カバ(kava)。日が暮れると、カバを飲ませてくれるバー(現地ではNakamalと呼ばれる)が店を開けるそうです。

 カバは、コショウ科に属する植物の根をすりつぶし、水で抽出したもの。見た目も味も「泥水のよう」と表現する人もいて、飲み慣れている人にとっても、決しておいしいものではないようなのですが、人気の理由は、その作用にあるようです。
 カバには、催眠鎮静作用、精神安定作用、筋弛緩作用などがあり、1~2杯飲めば、からだも心も緊張から解き放たれ、リラックスできるといわれています。
 お酒のようなもの、ともいえるのですが、アルコール飲料を飲んだときのように、陽気になったり、気が大きくなったりするのではなく、興奮がしずまり、小さい声で静かに話すようになるのだとか。こうした作用が、部族間の争いをおさめるときに役立ったとも伝えられていますが、光や音などの刺激を強く感じるようになるとの記述もあり、ちょっと危険な感じがしないでもありません。
 近年、不安やストレスをやわらげるサプリメントとして、ドイツやイギリス、カナダ、アメリカなどの欧米各国で利用されるようになりました。しかし、カバを含むサプリメントを摂取していた人で、肝機能障害が相次いで報告され、販売禁止の措置をとった国もありました。
 日本では、カバは「医薬品」扱いとされ、サプリメントとして販売してはならないこととされていますが、インターネットの普及によって、海外の商品も簡単に入手できるようになりました。海外からのおみやげに、いただくことがあるかもしれません。どのような場合でも、摂取は控えたほうが安心なのですが、妊娠中・授乳中の人、肝臓病の人、うつ病などの精神神経系の疾患のある人は、摂取しないように特に注意して下さい。お酒や中枢抑制作用のある薬剤(抗うつ薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬など)と一緒に摂取すると、両方の作用が強まり、副作用の危険性も高まることになりますから、絶対になさらないように。

 長年、カバ飲料を飲んでいるバヌアツなどの人々で、肝機能障害が問題になったことはないことから、両者に因果関係はないとの指摘もあります。しかし、原因がはっきりしていない今の段階では、慎重な対応が望まれます。