カシュウ

 「一般用薬品として販売されている滋養強壮薬を服用した女性が肝障害で入院。医薬品に含まれていたカシュウが原因とみられる」。11月下旬、こんなニュースが報道されました。あのカシューナッツで肝障害?あのカシューナッツが薬にも使われているの?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、カシュウとカシューナッツはまったくの別物です。

カシューナッツは、南米原産。ウルシ科の植物の果実です。おつまみとして、炒め物などの材料としてよく利用されています。植物性の脂肪を中心に、ビタミンB1やビタミンC、ミネラル類、アミノ酸類など、豊富な栄養素を含んでいますが、人によってはアレルギーを起こすことがあります。過去にナッツ類でアレルギーを起こしたことがある人、特にクルミにアレルギーのある人は食べるのを控えたほうがよいでしょう。

一方のカシュウ(何首烏)は、中国原産。タデ科のツルドクダミの塊根(根の一部が肥大したもの)です。唐の時代、名前を「何(か)」という老人が、これを食べたところ、白髪が烏(からす)のように黒くなったという言い伝えから、この名がついたとされています。
滋養強壮作用や解毒作用、育毛作用などがあるとされ、古くから漢方薬(当帰飲子など)や民間薬として利用されてきました。現在でも、商品の種類はあまり多くないものの、滋養強壮薬、ドリンク剤、育毛剤・養毛剤などに利用されています(カシュウは医薬品扱いのため、サプリメントなどの食品には用いられない)。

今回の報道より以前の2004年にもカシュウを含む漢方製剤で黄疸や肝機能異常が報告されているほか、海外でも、カシュウに関連すると思われる肝機能異常、肝炎、黄疸などの報告が複数みられます。
肝障害の原因がすべてカシュウにあるのか、肝障害がどのようなメカニズムで起こるのかなど、わかっていない点も多いのですが、「植物原料」「天然成分配合」と聞くと、「副作用がなく、作用はおだやか」というイメージを抱く人も多いと思いますが、植物でも、重い副作用が起こる可能性があることは知っておいて下さい。
今回のケースは、インターネットで購入した一般用医薬品を服用して起きた副作用でした。肝障害やアレルギーなどは、どの成分でも起こる可能性があり、すべてを防ぐことはできません。しかし、予防できる副作用もあります。一般用医薬品やサプリメントなどを購入されるときは、薬剤師などの専門家に相談して、自分に適したものを選ぶように心がけましょう。