ケルセチン

 デトックスという言葉、すっかり一般的になりました。体内にたまった毒素を排出して、健康なからだにというもの。マッサージから、岩盤浴、断食、ハーブティーにミネラルウォーターまで、"デトックス効果"をうたったさまざまな商品が人気です。確かに、「毒素がたまっている」と指摘されれば、思い当たることが一つ二つ・・・。でも下剤の宣伝まではいきすぎと思うのですが。

「からだに有害なミネラルの排出を促す」として、一時注目を集めたのが、ケルセチンです。ポリフェノールの一種なのですが、細かくみると、ジフェニルプロパン構造という共通の骨格をもつ「フラボノイド」というグループに分類されます。そばに含まれるルチン、柑橘類に含まれるヘスペリジンなどもこの仲間で、これらを総称して「ビタミンP」と呼ぶこともあります。
ケルセチンは、カシスやリンゴ、紅茶などにも含まれていますが、特に多いのが、タマネギの茶色い皮。料理のときにはさっさとむいてしまいますが、これを原料とした粉末やお茶などが、サプリメントとして販売されています。
 ポリフェノールの一種ですから、抗酸化作用があることはある程度予測されますが、そのほかにもさまざまな作用があると考えられています。

その一つが、血圧の上昇を抑えること。血管の収縮を抑え、血管をしなやかに保ち、血液の流れをよくすることで、高血圧の予防や改善に役立つといった報告が複数みられます。最近では、骨の形成を活発にする働きがあることも知られるようになり、骨密度の改善につながるのではないかとの期待も寄せられています。 しかし、デトックス効果については、それを裏づけるような資料を見つけることができませんでした。たしかに「有害なミネラルと結合し、無毒化する」といった記述はたくさんあるのですが、そこにどのようなメカニズムが存在するのか・・・残念ながら詳細を知ることはできませんでした。ケルセチンのデトックス作用を全否定するわけではありませんが、期待しすぎないで利用したほうがよいのかもしれません。

2005年、厚生労働省は妊婦に対して、魚介類に含まれるメチル水銀が胎児に影響を及ぼす可能性があるとして注意を呼びかけました。ただし、魚を食べてはいけないということではなく、あくまでも食べ過ぎないように、ということ。一般の人の場合、通常の食生活をしていれば、まず心配はないといわれています。 食物連鎖の頂点に立つ人間。その恩恵に感謝しつつ、いろいろな食品をバランスよく。