カンテン

 「心太」と書かれた文字を見て、娘が「こころぶと?」、それを母が「ところてん」と訂正―最近、そんなコマーシャルを目にします。「こころぶと」から「こころてい」に変化して「ところてん」と呼ばれるようになったといわれていますが、そもそもどうして「こころぶと」と名付けたのか、その語源は不明・・・でも、メタボのからだにとっては、確かにちょっと心強い存在です。

すでに奈良時代には、日本に伝わっていたとされるところてん。そのところてんを外に出しておき、夜の冷気と日中の日ざしで乾燥させたのが、寒天の始まりと伝えられています。ですから、ところてんも寒天もその材料はどちらも同じ。テングサやオゴノリなどの紅藻類です。
乾燥した角寒天1本中(約10g)は、7g以上の食物繊維を含有。その多くは水溶性の食物繊維で、水を含むと大きく膨らみ、ゲル状になる性質をもっています。しかも、カロリーは15 kcalほど。歯ごたえもあり、満腹感も得られることから、ダイエットに役立つ食品としてもよく知られています。

麺やごはん、スープ、デザートなどの食品にも広く利用され、摂取カロリーを抑えてくれたり、空腹を感じにくくしてくれたり・・・。排便を促して便秘の改善にも役立つほか、糖分の吸収をおだやかにする、脂肪分の吸収を抑えるなどの働きもあるといわれています。
主食を寒天食品に置き換える寒天ダイエットも人気ですが、置き換えるのは1日1食程度に。からだによいといわれる食物繊維だけでは、ビタミンやミネラルが不足してしまいます。また、食物繊維が多すぎると栄養素の吸収を阻害することもあります。これでは、体調を崩すおそれがあります。服用中の薬剤によっては、その吸収に影響が及ぶ可能性があります。基本となるのは、やはり、バランスのよい食事。その中に上手に寒天を取り入れていくようにしましょう。

また、寒天はつるっと飲み込めるイメージがありますが、飲み込みに問題があるお年寄りやお子さんが口にするときは注意が必要です。いったん固まった寒天は、80℃以上にならないと溶けません。そのため、大きなかたまりのままだと、のどに詰まらせてしまうことがあるのです。寒天を使った食品は細かく砕く、あるいは嚥下に問題がある方では、寒天ではなく口内の温度でも溶けやすいゼラチンを選ばれたほうがよいでしょう。

寒天はアガロースと呼ばれる多糖類からできていますが、近年、これを酸で分解して得られたアガロオリゴ糖に、抗炎症作用、抗酸化作用などがあるということが知られるようになってきました。古くからある食品の寒天が時代とともに進化していくのを楽しみにしています。