ハチミツ

 ミツバチが足りない!野菜や果物の受粉を行うミツバチが不足しているというニュース、春先、よく耳にしました。伝染病の流行、ダニの発生、農薬の影響など、要因はいくつか考えられますが、はっきりした原因は不明とのこと。アメリカでは数年前から、何万匹ものミツバチが突然、姿を消す「蜂群(ほうぐん)崩壊症候群」も問題となっています。巣に残されたのは、女王バチと幼虫、そしてハチミツ・・・。

ハチミツの原料は、文字通り、ハチが集めた花のミツ。でも、そのままではハチミツにはなりません。ミツバチが分泌する酵素(α-グルコシダーゼなど)の働きによってブドウ糖と果糖に分解され、濃縮され、巣の中で熟成されて、ようやく出来上がります。
ブドウ糖や果糖は、いずれも、比較的速やかに吸収され、エネルギーとして利用されやすい性質をもっています。古くから、滋養によい食べ物として親しまれてきたハチミツは、薬としても利用され、中高年の排尿の悩みなどによく使われる八味地黄丸は、8種類の生薬の粉末をハチミツで練って丸薬としたのが始まり、といわれています。

また、殺菌作用・抗炎症作用があることから、口内炎やくちびるの荒れにもよいとされ、現在でも、ハチミツを主成分とする塗り薬が販売されています。ハチミツの種類によっても殺菌作用の強弱に違いがあるようで、マヌカハニーなどその作用がよく知られています。
元祖・健康食品というイメージもあるハチミツですが、大さじ1杯は62kcal(上白糖35kcal、黒砂糖12kcal)。鉄や銅、ビタミンB1やB2なども含まれますが、量は黒砂糖の3分の1以下。ミネラルやビタミンの補給によいともいわれますが、そのためにはかなり大量に摂取する必要があり、今度はカロリーや糖質の摂り過ぎが心配。からだによいから、と砂糖をハチミツに代えている方を見かけることがありますが、特徴をよく知って、上手に利用しましょう。

なお、ハチミツは、1歳未満の子には与えないこととされています。これは、腸内で強い毒素をつくるボツリヌス芽胞がハチミツに含まれていることがあり、腸内細菌の発達が不十分な乳児が食べるとボツリヌス菌が腸で増殖しボツリヌス毒素を産生します。その結果、ボツリヌス症(手足の筋力低下、呼吸困難、意識障害など)を起こすおそれがあるのです。1歳未満の子に薬をのませるときなど、安易にハチミツを加えてしまったりしないように、ご注意下さい。

ミツバチは、ハチミツ以外にも、ローヤルゼリー、プロポリスなど、健康に役立つさまざまな素材を提供してくれています。そんなミツバチたちの健康を、私たちが考えてあげる時期がきているのかもしれません。