ナトリウム

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第4回目は、ナトリウムです。いわゆるサプリメントとして用いられることはありませんが、私たちのからだには欠かせないミネラルの一つです。


 ナトリウムは、細胞外液にイオン(Na+)として存在し、細胞内液に含まれるカリウムイオン(K+)などとともに、体液(水分)のバランスをとる役割を担っています。それらの濃度は海水に近いとされ、私たちは体の中に海を封じ込めているとも言えます。そんな大切なミネラルであるにもかかわらず、「ナトリウムを摂りましょう」などといわれることはあまりありません。

 それは、ナトリウムの摂取量が、高血圧やがんなどの発症と密接に関係していることが明らかにされているからです。私たちは通常、ナトリウムを食塩(塩化ナトリウム)として摂取していますが、世界各地の52集団が参加したIntersalt Studyでは、「ナトリウム排泄量と加齢に伴う血圧上昇の間に有意な正相関がみられた」としています。つまり、ナトリウムの摂取量が多いと、血圧も上昇する傾向があるということ。また、日本人を対象とした研究でも、「食塩摂取量が、胃がん罹患率・死亡率と正の関連を示す」といった報告がみられます。

 今回の食事摂取基準でも、「ナトリウムを食事摂取基準に含める意味は、過剰摂取による生活習慣病のリスク上昇を予防することにある。この観点から目標量を設定した」としています。その目標量は、18歳以上の男性で食塩として9g未満、女性では7.5g未満。日本血圧学会ガイドラインでは、6gとさらにきびしい値を示しています。

 平成20年国民健康・栄養調査の結果を見ると、20歳以上の男性の食塩摂取量は11.9g、女性は10.1g。平成13年では男性12.9g、女性11.5gでしたから、減少傾向にはあるのですが、目標値にはまだまだ遠いのが実情です。

 でも、ナトリウムを減らすためには、ちょっとした心がけも大切です。例えばラーメン。麺もスープもすべて食べた場合の食塩量は5gを超えてしまいますが、スープを半分残せば3.5g、スープを全部残せば1.9gまで減らすことができます。このほか、酢や香辛料、だしなどを上手に利用する、醤油やソースなどは小皿にとって使う(回しかけない)、カリウムの多い食品(野菜、果物、海藻類など)を積極的に食べるといったことでも、食塩量は減らすことができます。〔なお、加工食品などで、ナトリウムの量しか表示されていない場合は、ナトリウム量(g)に2.54をかけると食塩相当量(g)がわかります〕。

 人類が海から生まれた証しともいえるナトリウム。熱中症や脱水状態では血液中のナトリムも低下します。ナトリムは多すぎても困りますが、脱水状態の時のイオン飲料での補水はナトリムやカリウムなど母なる海の水を補うことと言えます。