EPA

 EPAは、サプリメント売り場でよく見かける成分です。EPAがより知られるようになったのは、1970年代のグリーンランドでの疫学調査からです。 アザラシ、 オットセイ等の海獣類を主食とするイヌイット族では、 同年齢層のデンマーク人と比べて心筋梗塞が少なく、 出血傾向が見られることが明らかにされたことによります。

 こんな調査結果から青味の魚を食べることの大切さが言われるようになり、そして魚脂中のEPAの活用につながっていったのです。EPAは、中性脂肪を下げたり、炎症を抑えたり、血液を固まりにくくする作用など多彩な作用が知られるようになってきました。

 現在「中性脂肪が気になる方」の特定保健用食品の関与成分となっているほか、「血液をサラサラにする」「コレステロールを下げる」「動脈硬化を予防する」などともいわれ、人気のあるサプリメントの一つとなっています。

 医療用医薬品としては「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善、高脂血症(脂質異常症)」に以前から用いられています。また、この成分は昨年末、OTC薬(市販薬、大衆薬)としての製造販売が承認されました。認められた効能・効果は「健康診断等で指摘された、境界領域の中性脂肪値の改善」。服用対象者は、中性脂肪値が150mg/dL以上、300mg/dL未満の人(20歳以上)となる予定で、医師の診断を受けたことが条件となり、その販売にあたっては、いろいろな規制がかけられるようです。

 長い歴史の中で、安全性が保障されてきたEPA。その使用にあたってはもっと多くの方がその恩恵を受けることができるように、強すぎる販売規制は問題ではないかとも思えます。

 ところで、脂は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にわかれます。飽和脂肪酸は常温では固体で存在するものが多く、特に動物性のものが多く、この脂の取り過ぎが高脂血症につながることはよく知られています。一方不飽和脂肪酸には、一価の不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸があり、多価不飽和脂肪酸はn-3系とn-6系に分かれます。何それと、思われるかもしれませんが、リノール酸というと、「聞いたことがある」方も多いのではないでしょうか。紅花油やコーン油などに含まれるリノール酸がn-6系になります。一方、今回紹介しているEPAが、n-3系の脂です。

 ところで、リノール酸という言葉、健康に良い脂の代名詞のようにマスコミなどで取り上げられたのですが、現在はその取り過ぎは、アレルギーや炎症を引き起こす、血液を固まりやすくすることに関係し、過剰に摂ることの問題点が指摘されるようになってきました。リノール酸が体の中でアラキドン酸に変化し、それが問題になるということです。

 マーガリンに含まれるトランス脂肪酸の有害性もクローズアップされるようになってきました。しばらく前まで、バターよりマーガリン、そしてリノール酸の積極的摂取。これが健康に良いと信じられていました。今は、取り過ぎは気をつけよう。マーガリンよりはバターの方が、いいかな・・・。n-3系とn-6系の摂取は1:4のバランスでということが言われています。

 では、今信じていることは、本当に正しいのか。不安になってきてしまいます。結局、食事は、特定のものにかたよらず、バランスよくということでしょうね。