CRPS(複合性局所疼痛症候群)

 昔、渡辺淳一氏の小説だったと思うのですが、交通事故後、被害者の最初の症状はたいしたことはなかったのに、だんだんと調子が悪くなっていき(はた目には悪いとは思えない、検査の結果も悪いものではない)、被害者は症状を訴え続け、加害者にたかり続け、どんどん加害者を追い詰めていくもの。不気味な内容だったと記憶しています。善良だった被害者が、どんどんいろいろな症状を訴えていく様子。追いつめられていく加害者・・・。

 ところでCRPS(複合性局所疼痛症候群)という疾患があります。骨折、組織傷害や神経損傷などが引き金となって起こる感覚神経、運動神経、自律神経、情動系および免疫系の病的変化によって発症する慢性疼痛症候群。このCRPS患者に見られる症状は、実に多彩です。

 その症状としては、アロディニア(普段は痛みと感じないようなものにも痛みを感じる。感覚が過敏になる)例えば、髪をブラッシングしようとしても痛くてできない、顔に風が当たっても痛い、手袋も痛かったり不快でいや、布団や毛布が体に触れるだけで痛かったり不快だったりする。発汗異常(汗が多かったり、少なかったり、出なくなったり)皮膚温度の異常(皮膚温も高かったり低かったり)、皮膚組織の委縮あるいは肥厚、筋委縮、筋力低下、不随意運動(振戦など不随意運動が出たり、痙縮で動かなくなったり)など、一部を挙げただけでも症状の多彩さはもちろんのこと、相反する症状が出ていることがわかります。

 交通事故後、外傷が癒えるとともにこれらの症状が出てきたとしたら。原因も治療法も確立されていないこのCRPSに罹患したとしたら・・・。それは、想像を絶する苦しみの中に追いやられることになるのではと思えます。先の小説も、被害者がCRPSだったと仮定すると、また、別の悲劇がそこにあります。

 私が、このCRPSという疾患を知ったのは、子宮頸がんワクチンの副反応として紹介されたときです。「14歳の女子中学生が 2011年 9月中旬にワクチン(サーバリックス®)1回目を接種、11月中旬に 2回目を左腕に接種したところ、2回目接種後、左腕の腫脹、疼痛、しびれがあり、その他、左肩、左足、右腕、右足にも疼痛が間欠的に生じた。夜間には肩から肩甲骨、指先まで痛みが広がり、疼痛のため歩行困難となった。」ワクチン接種後のCRPSの発症が紹介されていました。

 そしてCRPS は、ワクチンの成分によっておこるものではなく、外傷、骨折、注射針等の刺激がきっかけになって発症すると考えられ、今回も筋肉注射の注射針の刺激によって引き起こされた可能性が高いとされています。

 子宮頸がんの予防。CRPSの発症。ワクチン接種の是非。交通事故。CRPSの発症。事故後の保障・・・。早く治療法が確立されることを願ってやみません。