ビタミンA

 白黒の古い映像で、スプーンですくった液体を口に入れられている子の、しかめっ面を見ることがあります。飲まされているのは、肝油。当時はタラの肝臓からとった油を凝縮したものだったので、味が悪い上に、独特の生臭さが・・・。
 肝油の主成分はビタミンA。発育不良や夜盲症の予防を目的に、学校などで配られた時代がありました。その後に発売された、甘いドロップタイプの肝油は大人気に。黄色い缶に入った甘い肝油。懐かしく思い出される人も多いでしょう。

 現在の日本で普通に食事をしている限り、ビタミンAが不足することは少ないとされていますが、過剰症が強調されすぎその摂取を控えすぎるのも問題です。ビタミンAを摂取する場合、必要量についての正しい知識が必要です。
 ビタミンAは脂溶性で、体内に蓄積する性質がありますから、用法用量を厳守すること。先に紹介したドロップタイプのものは、お菓子と間違えて、子どもが一度に摂取してしまわないよう保管場所にも注意が必要です。
 また、妊娠中の女性がビタミンAを継続して大量摂取すると、胎児に先天異常が起こるリスクが高まるとの報告があります。妊娠中の人はもちろん、妊娠を望んでいる人も、サプリメントなどでビタミンAを摂ることは避けることとされています。

 近年、医療現場では、ビタミンAの活性代謝物(トレチノイン)やビタミンAの類似化合物(タミバロテン、エトレチナート)が、急性前骨髄球性白血病、他の治療法で効果がみられない難治性の乾癬・魚鱗癬・掌跡角化症・掌跡蹠膿疱症などに用いられることがあります。
 これらの薬剤はビタミンAの性質を有しているため、別にビタミンAを摂取すると、皮膚や粘膜の乾燥、頭痛、食欲不振、吐き気、倦怠感など、ビタミンAを摂り過ぎたときのような症状がみられることがあります。牛乳や脂肪分を多く含む食事で、薬剤の吸収が増加するともいわれ、作用の増強や副作用の発現などがみられることも考えられます。