ニンニク

 「疲れがとれる」「スタミナがつく」などとして、スポーツ選手や芸能人を中心に人気のある「ニンニク注射」。成分は、ビタミンB1を中心とするビタミンB群とグリコーゲン(ブドウ糖が長くつながったもの)。ビタミンB1の働きで、ブドウ糖がスムーズにエネルギーに変わることによって、効果があらわれると考えられます。ニンニクが直接入っているわけではありませんが、元気が出るというイメージと、わずかにニンニクに似たにおいがすることから、このように呼ばれるようになったそうです。

 実際のニンニクには、ビタミンB1・B6・C、カリウム、炭水化物、蛋白質などのほか、アリインという成分が含まれています。アリインのままでは無臭ですが、切ったり、すりつぶしたりして細胞が壊されると、酵素(アイリナーゼ)の働きでアリシンとなり、これが、ニンニク独特のにおいを発します。
 さらにアリシンは、ビタミンB1と結びついてアリチアミンという物質になります。これは、水や熱などにも強い、吸収されやすい、からだの中で利用されやすいというメリットをもっています。ビタミンB1が豊富な豚肉とニンニクは、味の面でも、栄養面でも、相性のよい組み合わせ。武田のビタミン剤「アリナミン」も、このアリチアミンにちなんで名づけられたといわれています。

 古くから、滋養強壮、疲労回復などによいとして利用されてきたニンニクですが、血液をサラサラにする働き(抗血栓作用)があることも明らかになりました。このため、血栓をつくりにくくする薬(ワルファリン、アスピリン、チクロピジンなど)と併用すると、両方の作用が重なって作用が強まり、出血しやすくなる、出血が止まりにくくなるなどの症状があらわれることがあります。
 また、ニンニクには、血圧や血糖値を正常に保つ働きがあるともいわれ、高血圧や糖尿病で治療を受けている人では、血圧や血糖値のコントロールがうまくいかなくなるおそれも考えられます。
 さらに、最近では、HIVプロテアーゼ阻害薬と呼ばれるエイズの治療薬と併用すると、薬剤の作用が弱まるとの報告もみられます。しかし、作用を増強するといった逆の結果を示すデータもあり、今のところ、一定の見解は出ていませんが、ニンニクが、これらの薬の作用に何らかの影響を及ぼす可能性は高いようです。

 相互作用が心配される薬剤をいくつか挙げましたが、いずれも場合も、極端に多い量でない限り、食事の中で食べる程度であれば心配はないと思われます。ただし、病気の治療中に「元気をつけよう」とサプリメントやドリンク剤でニンニクを摂る場合は、ご注意を。