バレリアン

 温かい布団から、冷たい朝の空気の中へ起き出すときの勇気!ぐっすり眠って迎えた朝であれば、寒くても、眠くても気分は爽やかなのですが、布団に入ってもなかなか寝つけない、眠れたころにはもう起きる時間・・・そんな人にとっては、毎日がつらい朝かもしれません。
 そんな人が増えているせいか、好きな音楽やちょっと暗めの間接照明、アロマキャンドル、ハーブティーなどで、眠るための演出をしている人も多くなっているようです。

 眠りを誘うと言われるハーブは数多くありますが、古代ギリシアの時代から今日まで使われているものの一つが、バレリアンです。神経の高ぶりを抑え、鎮静作用、抗不安作用、催眠作用を有する薬草として、神経過敏、イライラ、不眠、緊張性の腹痛、ストレスが関与している高血圧などに用いられてきました。
 バレリアンは、脳内で抑制的に働くGABAという神経伝達物質の受容体に働きかけることで脳内でのGABAの量を増やし、気分を落ち着かせたり、眠りを誘ったりするのではないかといわれています。こうした作用は、現在、医療用として広く用いられているベンゾジアゼピン系の催眠薬・抗不安薬とよく似ているとの指摘もあります。

 こう言うと、「じゃあ、サプリメントのほうがいいんじゃない?病院に行く時間が節約できるし、副作用も少なそうだし」と思いたくなるかもしれませんが、残念ながらそうとも言えません。
 一時的に眠れない人が、一時的に使用する程度であれば問題はないのですが、不眠症と診断されている場合は、処方された薬をきちんとのみ、定期的に受診することが第一。同様の作用をもつとはいえ、サプリメントには有効成分の量にばらつきがあるなどの問題もあり、医療用医薬品のかわりにはならないのです。薬ものんで、さらにサプリメントも、という併用も危険です。作用が強く出すぎて翌日の生活に支障を来たしたり、症状に変動を生じたりすることもあります。安易な併用はしないようにしましょう。
 なお、バレリアンの日本名は「セイヨウカノコソウ」。小さなつぼみが集まった様子が、鹿の子模様のように見えるところから、この名前がついたといわれます。一般用医薬品として薬局やドラッグストアなどで売られている催眠鎮静薬には、セイヨウカノコソウを配合した商品もありますから、薬剤師への相談と、成分の確認を、ぜひ。