カルニチン

 羊の肉ともやしやキャベツなどの野菜を焼いて食べるジンギスカン。以前は、北海道の郷土料理というイメージが強かったのですが、最近は東京でも、ジンギスカンの専門店をよく見かけるようになりました。
 きっかけは、3年ほど前。羊の肉は、豚肉や牛肉に比べてコレステロールが少なく、体脂肪の燃焼を助けるといわれるカルニチンを多く含んでいるため、ヘルシーな食べ物として女性誌や健康番組などで取り上げられたことでした。

 カルニチンは、アミノ酸の一種。もともとは昆虫の成長因子として発見されたのですが、人間にとっても、脂質の代謝(燃焼や分解)の面で欠かせない物質であることが、広く知られるようになりました。
 私たちが食べ物から摂った脂肪分は、リパーゼ(脂肪分解酵素)の働きで脂肪酸となり、“エネルギー産生工場”であるミトコンドリアで燃やされて、エネルギーに変換されます。ここでのカルニチンの役割は、脂肪酸をミトコンドリアに運ぶこと。ですから、カルニチンの働きがないと、脂肪の燃焼が滞り、活動するためのエネルギーも不足して、肥満につながりやすくなるといわれています。
 カルニチンは、私たちの体内でも、リジンとメチオニン(いずれも必須アミノ酸)から合成されていますから、健康な人であれば、不足することはほとんどありません。しかし、その合成量は年齢を重ねるにしたがって減っていくことから、カルニチンの不足が、中年太りの一因なのではないかとの指摘もあるようです。
 ダイエットを気にする人たちに人気のあるカルニチン。エネルギーへの変換を助けるコエンザイムQ10や、カルニチンの体内での合成に不可欠なビタミンCなどと一緒に摂ると、より効果的ともいわれますが、のむだけでやせるというわけにはいきませんので、過剰な期待は禁物、ということで・・・。

 カルニチンの不足が、私たちのからだに及ぼす影響は肥満だけではありません。ピボキシル基という構造をもつ抗生物質を、長い間、のんでいたお子さんで、血中のカルニチン濃度の低下による低血糖症状(けいれん、意識障害など)がみられたとして、注意が呼びかけられたことがありました。てんかんの治療薬などでも、同じような報告があります。
 だからと言って、自己判断で治療としてカルニチンを摂取することはなさらないで下さいね。不安なこと、気になる症状などがあるときには、まずは、医師や薬剤師にお話しを。