ブラックコホシュ

 「今年の夏は、これでバストアップ!」。4、5年ほど前、こんなキャッチフレーズのついた商品が話題となったことがありました。ドラッグストアにも並んだその商品は、下着でもなく、クリームでもなく、ドロップタイプのサプリメント。原材料名の欄には、チェストツリー、レッドクローバー、ワイルドヤム、ブラックコホシュ、フェヌグリーク、ノコギリヤシなど、ホルモンの働きに関係があるといわれる植物の名前がずらりと並んでいました。

 このサプリメントにも含まれているブラックコホシュ。「アメリカショウマ」という別名もあるように北米原産の植物で、古くから神経痛や婦人病の民間療法に用いられてきました。エストロゲン(女性ホルモン)に似た作用をもつとされ、現在でもアメリカでは人気のあるサプリメントの一つとなっています。
 ほてりやのぼせなどの更年期症状、月経前にみられる不快な症状を軽くするとされていますが、即効性はあまり期待できないようで、症状が改善されるまでには、4週間ほど、摂取を続ける必要があるともいわれています。
 しかし、近年、ブラックコホシュとの関連が疑われる肝障害が、オーストラリア、イギリス、フランスなどから相次いで報告されています。ブラックコホシュが原因と断定されたわけではなく、これまでのところ、日本での健康被害も報告されていませんが、摂取中に体調の悪化を感じたときには、すぐに摂取をやめ、医師に相談するようにして下さい。効果が得られるまでにある程度の時間を要するとはいえ、健康を害してしまっては台なしですからね。
 調子がいいと思われる場合も、長期にわたる摂取は控えるようにしましょう。ドイツのコミッションE(薬用植物の評価委員会)では、ブラックコホシュの使用の上限を6ヶ月としています。
 ブラックコホシュの作用メカニズムについてはわかっていない部分も多く、エストロゲン様作用を疑問視する人もあるようですが、女性ホルモンに何らかの影響を及ぼすことも否定できません。ホルモンが関与する疾患(子宮内膜症、子宮筋腫、子宮がん、乳がんなど)のある人、ホルモン療法を行っている人では、ブラックコホシュによって症状が不安定になったり、悪化したりする危険性も考えられますから、摂取は避けて下さい。

 バストアップによいといわれるサプリメント。その効果はどうだったのか、今でもちょっと気になるのですが・・・。「植物だから安心」「天然由来成分だから安全」とは必ずしも言い切れないことだけは、どうぞ、お忘れなく。