東京近郊の駅構内で、黒酢バーを見かけることが多くなりました。メニューは、黒酢&豆乳、黒酢&紫の野菜、ビネガーシェイク、りんご酢&青汁、黒酢とりんご酢の青春パフェなど。精白していない玄麦を原料とした黒酢で、まろやかで、さっぱりした味が人気、とのことです。

 食酢(醸造酢の場合)は、主に穀類や果実類に、アルコールや砂糖類を加えて、酢酸発酵させたもの定義されています。黒酢もこの一種で、米を原料としたものを米黒酢、大麦のみを使用したものを大麦米酢といいます。
 黒酢独特のあの色は、醗酵と熟成の過程で、アミノ酸と糖がゆっくりと反応することによって生じます(アミノカルボニル反応)。成分の含有量は産地や原料などで異なりますが、クエン酸やリンゴ酸、コハク酸、酢酸などの有機酸、各種のアミノ酸を含み、疲労回復や健康維持によいとして人気があります。
 なお、もろみ酢は、泡盛を作る過程で出るもろみ粕を原料としたもの。酢酸発酵をしないため、食酢の定義からははずれますが、クエン酸を豊富に含んでいるのが特長です。
 さらに、近年は、「血圧が高めの方の」特定保健用食品として、食酢を主成分とした飲料も発売されるようになりました。関与成分は、酢酸。末梢血管を拡張させ、また、血管にかかる抵抗を低下させることで、血圧低下作用を示すと考えられていますが、詳細は不明です。
 「治療を受けるほどではないが、気をつけるように言われた」という方にとっては、このようなものを利用されてもよいかもしれません。でも、すでに医療機関を受診し、血圧を下げる薬を服用している場合は、医師・薬剤師に必ず相談を。もっと血圧を下げたい、薬の量を減らしたいなどの理由から、自分の判断だけで併用することは避けましょう。

 小魚などを食酢に漬け込んだマリネや南蛮漬けでは、固い魚の骨もやわらかくなり、まるごと食べることができるようになります。これは、カルシウムとクエン酸が一緒になると、溶けやすくて、吸収されやすい形に変わるため。
 料理の中で酢を使うと、ミネラルの吸収が促進されるだけでなく、食塩の使用を減らすこともでき、積極的に活用したいところです。しかし、クエン酸は、アルミニウムの吸収も促進します。アルミニウムが生体に吸収されるのは避ける必要があります。制酸薬として、一般用医薬品の胃腸薬や解熱鎮痛薬にアルミニウムを含むものがあります。これらの薬を服用しているときは、酢やクエン酸を含む飲料は控えるようにして下さい。