ヘスペリジン

 「青みかんビタミンP(日本食研)」「Pが導くコラーゲン(グリコ)」・・・コンビニやドラッグストアなどで、「ビタミンP」という文字を目にすることがあります。ビタミンPなんて、あったっけ? そんな声が聞こえてきそうですが・・・。

ビタミンは、「微量で体内の代謝に重要な役割をしているにもかかわらず、自分でつくることができないもの」のこと。言い換えると、不足するとからだに異常を生じることがあるけれど、体内で合成されないため、食品などから摂取しなくてはならないもの、ということになります。
ヘスペリジンの場合、不足しても欠乏症を生じることはないので、ビタミンの定義からは外れますが、ビタミンと似た性質をもつ「ビタミン様物質」として扱われています。つまり、ビタミンPという名前は"ニックネーム"のようなもので、実際は、ヘスペリジンを中心とするフラボノイド類(ある共通の構造をもった植物成分のグループ。ポリフェノールの一種)。

ヘスペリジンは、主にミカンやレモンなどの柑橘類に含まれ、果肉の部分よりも、果皮や房、白い筋の部分に多く存在します。梅雨明け間もないころの、まだ青いミカンには豊富に含まれているのですが、成長が進むにつれて、その量は減ってしまいます。
ヘスペリジンは決して新しい成分というわけではなく、これまでにも、一般用医薬品のかぜ薬などに配合されてきました。これは、ヘスペリジンが、ビタミンCの働きを助けるといわれているため。ビタミンCは熱にも水にも弱く、壊れやすい物質なのですが、ヘスペリジンが一緒だと安定化し、吸収されやすくなることが知られています。

このほか、毛細血管を丈夫にしたり、血液の流れを改善したりする作用があることから、冷えやむくみ、クマの解消、しみ・そばかすの予防などによいのではないか、血中コレステロール値や高血圧の改善、アレルギー症状の軽快などにも役立つのではないかなど、さまざまな可能性が示唆され、研究が進められています。
今までのところ、胃痛や胃もたれ以外に、大きな問題となる副作用や相互作用は報告されていないようですが、ジュース(果汁)として摂る場合は、一緒に入っている他の柑橘類の成分や糖分などにも注意したほうがよいかもしれません。

ごくわずかな量で重要な働きをし、それがそこにないと不都合が生じる・・・でしゃばらず、でも、存在感のあるビタミン。生体維持のための名脇役といったところでしょうか。