クマザサ

 餡の入った草もちを、ササの葉で俵型に包んだ笹団子。新潟県の名物として有名です。そのお隣の山形県では、もち米をササの葉で包んで蒸した三角形の笹巻きに。きなこをかけていただきます。ササの葉には抗菌作用があることも知られ、農作業が本格化する今ごろの時期の昼食としても大活躍していたとか。巧みな生活の知恵ということでしょうね。
「クマザサ」と聞くと、「熊笹」と思いがちですが、本当は「隈笹」。冬になると葉の周りが白くなって隈取りのように見えることから、こう呼ばれるようになったといわれています。

その成分としてよく知られているのが、葉緑素(クロロフィル)。理科の授業で習った光合成―二酸化炭素と水から、ブドウ糖と酸素が作られるというものですが、この反応は、葉緑素が太陽の光を吸収することがきっかけになって行われます。
葉緑素を配合した緑色のガム。口にしたことがある人も多いでしょう。葉緑素には、脱臭・消臭作用があることが知られています。口臭の予防を目的とした医薬品やサプリメントのほか、消臭スプレー、靴の中敷、介護用紙おむつや尿とりパッドなどにも広く利用されています。

また、傷ついた粘膜を保護し、修復を助ける作用もあることから、口内炎や胃炎の民間薬としても用いられてきました。本来の葉緑素は、その中心にマグネシウムが存在しますが、それを銅に代えて安定化させたものが、胃潰瘍や胃炎の治療薬として使われています。
最近、クマザサのエキスが「がんの予防によい」「デトックス効果がある」などとして紹介されているのを耳にすることがあります。食物繊維が多いことから便通の改善には役立つかもしれませんが、それを「デトックス」と言ってもいいのか、疑問が残ります。がんについても過大な期待は禁物です。

クマザサは葉緑素以外の成分も豊富ですが、その分、注意も必要となります。まずはビタミンK。血液を固まりにくくするワルファリンの作用を弱めてしまう可能性があります。また、カリウムも含まれるため、ACE阻害薬、ARB、カリウム保持性利尿薬などの血圧を下げる薬を服用している人では、血液中のカリウム量が増え、筋力低下、不整脈、下痢などの症状がみられるおそれもあります。配合量は商品によって大きく異なるようですが、何かのんでいる薬がある人は、摂取前に、医師・薬剤師に相談するようにして下さい。

桜の季節もそろそろ終わり。今年は、新緑も1週間くらい早いようです。またあの暑い夏がやってくる前に、さわやかな風と緑を思いっきり楽しんでおきましょう。