麦芽

 「強い子の~」というキャッチフレーズと緑色のパッケージで知られる「ミロ」(ネスレ)。今年で発売36周年を迎えるそうです。子供のコーヒーはこれと言いながら母が、ココア色のパウダーを牛乳に溶かしてくれたことが思い出されます。「麦芽(飲料)」という言葉を、この商品で知った方も少なくないのではないでしょうか。

麦芽の原料となるのは、主に大麦。製粉されてパンや麺類の原料となる小麦に対して、大麦はそのまま炊いて麦ごはんとして食べられたり、ビールや焼酎、味噌などの発酵食品に使われたり。大麦の「大」の文字には、「用途が広い」という意味が込められているともいわれます。
かつて麦ごはんといえば、安くてまずいものの代名詞でした。しかし、でんぷんや蛋白質はもちろん、白米にはほとんど含まれないビタミンB群も含み、食物繊維も豊富であることから、生活習慣病の予防によい、便通の改善に役立つなどとして見直されるようになってきました。

麦芽は、大麦の麦粒を水に浸して発芽させたもの。発芽させることで、もともと大麦に存在しているアミラーゼ(でんぷんを分解・消化する酵素)の働きが活発になります。その結果、大麦中のでんぷんの分解が進んで糖(主に麦芽糖。マルトースとも呼ばれる)が作られるため、独特の甘味や風味が生まれることになります。
ビールのおいしさはこの麦芽によって決まるともいわれますが、消化酵素を含み、栄養価も高いことから、胃腸の働きを助け、滋養強壮に役立つとして漢方薬・民間薬としても利用されてきました。麦芽糖そのものも、「滋養糖」などの商品名で食が細い子どもの栄養補給に用いられてきたほか、その発酵作用が腸をおだやかに刺激して排便を促すことから、現在でも、麦芽糖は医薬品(マルツエキス)として赤ちゃんの便秘に使われています。

麦芽にはコレステロールを下げたり、血糖値を下げたり、さらには胃がんの発生リスクを低減させるといった報告もあります。食事の中にうまく取り入れたいですね。ただし、高コレステロール血症や糖尿病など治療を受けている方は、その治療に影響を与える可能性がありますから、その使用にあたっては、医師・薬剤師に相談してからにしてください。

「ミロ」が発売された1970年代ごろまでは、どんどん食べて、栄養をつけてと言われたものですが、最近では、子どもも栄養素の摂りすぎには気をつけて、バランスよく、と変わってきました。子供のコーヒーなんて言われてのんだミロですが、生活習慣病予防にメタボの私の飲み物といえるかも知れません。