カモミール

 にんじんを食べ過ぎておなかをこわしたピータラビットに、おかあさんがカモミールティーを飲ませてあげる-「ピーターラビット」のお話の中に、こんな場面があります。おなかの調子を整え、からだを温める働きがあるカモミール。日本でいうと、くず湯のような存在でしょうか。からだだけでなく、心までぽかぽかしてくるような気がするのは、カモミールの作用によるものだけではないでしょう。

カモミールはキク科の植物。花は中央部が黄色で、花びらが白。マーガレットに似ていますが、それよりもちょっとたくましい感じ。リンゴのような香りがあり、カモミールという名前も「背丈の低いリンゴ「大地のリンゴ」という意味のギリシア語に由来。日本名のカミツレ(加密列)は、オランダ語の「カミッレ、カミルレ」からきているといわれています。
私たちがふだん「カモミール」と呼んでいるものの多くは、「ジャーマンカモミール」。「ローマンカモミール」という種類もありますが、こちらは香りが強く、苦味もあるせいか、実際にはあまり使われないようです。「カモミールティーは苦い」という印象をお持ちの方は、もしかしたらローマンカモミールのお茶を飲まれたのかもしれません。

成分は、精油成分(アズレン、ビザボロール、カマズレン)、フラボノイド類(アピゲニン、ルテオルニン)、クマリン類など。胃腸の働きを助ける、胃の痛みをしずめる、ひき初めのかぜの症状(のどの痛み、寒気、頭痛など)をやわらげるなど、さまざまな用途に使われています。気持ちをおだやかにし、眠りを誘う作用もあるとされ、カモミールティーは「グッドナイトティー」とも呼ばれます。
安全性は比較的高いとされていますが、カモミールの成分の作用から、ワルファリン(抗凝固薬)や抗不安薬・睡眠薬などの作用を強める可能性があります。「睡眠薬をのんで、カモミールティーものんで」というのは避けたほうがよいかもしれません。また、キク科の植物(ブタクサ、ヨモギなど)にアレルギーのある人も要注意。サプリメントとして摂取するときだけでなく、アロマオイルなどを肌に使う場合も、使用前に医師・薬剤師に相談して下さい。

中川翔子の「カミツレ」という曲の中に、こんな歌詞があります、「カモミールティーでも飲みながら話そう ふられたことはうわさで知っていたよ」。ここはやっぱり、くず湯よりカモミールティーが似合うようで・・・。