ビタミンD3

 紫外線は悪。そんなイメージが定着してしまったようです。日傘をさし、サンバイザーのついた帽子をかぶり、手には日焼け用の長い手袋、目にはサングラス・・・。そんなスタイルで自転車に乗っている方を見かけることがあります。紫外線がどうだとか言う前に、交通事故のほうが心配になってしまいます。私が、子供を育てるとき母子手帳には、日光浴をさせるように記載されていました。しかし、現在は紫外線の皮膚がんへの影響などから、母子手帳から日光浴の項目は削除され外気浴の記載に変更されています。うっかり孫に、昔の経験から日光浴でもさせようものなら、嫁、姑戦争勃発の恐れありです。でも、昔は、なぜ日光浴の記載があったのか、その理由の一つは、ビタミンDが皮膚で合成されるからです。

ビタミンDは、腸からのカルシウムの吸収を促進し、骨が造られるのを助ける栄養素。腎臓からのカルシウムの排泄の調節等にも関係し、血中カルシウム濃度を正常域に保つことも知られています。というように、ビタミンDと言えば、カルシムと骨が連想されます。一方、インフルエンザや風邪の予防に関係したビタミンといえば、多くの方がビタミンCを思い浮かべられるのでは。でも、最近のデータからビタミンDにもその作用が期待できるとの報告があります。
ビタミンDと呼吸器系の疾患の関連を調べたデータから、ビタミンDが不足している人は、ビタミンが足りている人と比べて、呼吸器系の疾患を引き起こす可能性が40%ほど高いとか、喘息や慢性閉塞性肺疾患の患者さんは血液中のビタミンDの濃度が低いという結果が報告されるようになってきました。

ビタミンDが、初めて体内に入ってきたウイルスや細菌を異物とみなし、攻撃してくれる自然免疫を高め感染を防いでくれるようです。新型インフルエンザに対する予防効果も言われており、注目のサプリメントです。ビタミンDと相互作用で注意したいのは、カルシウムやマグネシウムを含む医薬品・サプリメント。併用により、高カルシウム血症、高マグネシウム血症を起こすことがありますから、併用は医師の指示にしたがいましょう。また、心臓のポンプの働きを高めるジゴキシン等の強心配糖体成分を含む医療用医薬品を服用中の方は、強心配糖体の副作用(悪心、嘔吐等)を増強する可能性がありますから併用は避けましょう。
フェニトイン、フェノバルビタールなどを長期投与時には、ビタミンDが欠乏することが知られています。これらの薬剤を使用されている方は、一日15分程度の日光浴やビタミンDの積極的摂取が必要と言えそうです。

世の中、黒か白。いいか、悪いか。でも、そんな単純なものではありません。太陽から降り注ぐ光。子供は風の子。冬でも短パンにランニングシャツで飛び回っていた子は風邪をひきにくかったように思います。皮膚でのビタミンDの合成が関与していたのでは、と、思いを巡らせています。