銅 part2

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第8回目は、銅です。10円硬貨でおなじみの銅。私たちの体内では、どのような働きをしているのでしょう。


 体内に存在する銅は、およそ0.08g(80mg)。10円玉1個の重さが約4.5gですから、ごくごく少量であることがわかります。しかし、こんなにわずかな量ですが、不足した状態が続くと、健康を害するおそれがあります。

 銅は、赤血球中のヘモグロビンの合成には欠かせません。さらに鉄の吸収や代謝にも関与していることから、欠乏すると、貧血を起こすことが知られています。一般用医薬品の貧血治療薬の中にも、銅(硫酸銅、銅クロロフィリンナトリウムなどとして)を配合した商品があります。

 このほか、多くの体内酵素の働きや骨の形成を助ける栄養素でもあり、エネルギーの生成、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去などに関与しているともいわれています。

 平成20年国民健康・栄養調査の結果をみると、20歳以上の男性の銅摂取量は1日1.30mg、女性は1.11mg。18歳以上の銅の食事摂取基準は、男性が0.9mg、女性が0.7mgですから、男女とも十分に満たしていることがわかります。

 ただし、たくさん摂ればいいというわけではありません。銅の過剰症として知られるのが、ウイルソン病。銅の代謝や排泄に異常を来たし、銅が肝臓や脳、角膜などの臓器に蓄積するものです。その結果、肝機能障害、神経障害、関節障害などがみられ、黒目の周りに青緑~黒緑色の輪(カイザーフライシャ―輪)が現われます。ウイルソン病は、3~4万人に一人に発症する遺伝疾患ですから、一般にはあまり心配する必要はなく、耐容上限量は、18歳の男女とも10mgとされ生体に存在している銅の量から考えてもかなり高用量です。

 しかし銅は、鉄や亜鉛などの金属の吸収にも影響を及ぼすことが知られており、特に亜鉛とは、拮抗関係にあることが明らかで、銅を摂り過ぎると亜鉛の吸収が抑えられてしまいます。前回(2005年)以前の基準では、銅の量が多すぎて亜鉛が十分に吸収されていないのではないかと指摘されていました。そこで、2005年の食事摂取基準から、銅の推奨量が引き下げられ、摂取比率も、男性では銅1に対して亜鉛6.1~6.7だったものが1:11.25に、女性では銅1に対して亜鉛5.6~6.2だったものが1:10と改められています。2010年版の食事摂取基準でも、この値が踏襲されています。


 通常の食事を摂っていれば、銅が不足することはないといわれていますが、亜鉛の過剰摂取には注意が必要です。サプリメントなどで摂取する場合は、他のミネラルとのバランスも考えて摂るようにしましょう。