ビタミンK

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第17回目は、ビタミンKです。「ビタミンK配合」と大きく表示されたサプリメントはほとんどありませんが、青汁やクロレラなどに豊富に含まれている実は身近な栄養素の一つなのです。


 ビタミンKは、緑色の濃い野菜や海藻類などに多く含まれるものと、動物性食品に広く含まれるもの、納豆などの発酵食品に含まれるものがあります。ビタミンKは、ただ一つの物質ではなくフィロキノン、メナキノン類などの総称で、それぞれの働きの違いなどについては、まだよくわかっていないようです。

 ビタミンKを多く含む納豆は、「骨を丈夫にする」として特定保健用食品(トクホ)にもなっています(関与成分:メナキノン-7)。オステオカルシンと呼ばれる骨蛋白質の働きを高め、カルシウムが骨に定着するのに役立っているのです。

 また、ビタミンKは血液を固まらせる因子の活性化にも関与しています。そのため、ビタミンKが不足すると血液が固まりにくくなり、あざ(皮下出血)ができやすくなる、歯茎などから出血しやすくなる、出血が止まりにくくなるといった症状がみられることがあります。ビタミンKは腸内細菌によっても作られることから、腸内細菌がまだ定着していない赤ちゃんでは、ビタミンKが不足しやすく、ビタミンKの欠乏から頭蓋内や消化管などからの出血が問題となるため、特にビタミンKの含有量が少ない母乳で育てられている赤ちゃんではビタミンK製剤の投与がなされています。

 平成20年国民健康・栄養調査によれば、ビタミンKの摂取量は、20歳以上の男性で255μg、女性では241μg。食事摂取基準による目安量は18歳以上の男性で75μg、女性では60~65μg。数値的には不足しているわけではありませんが、年齢が高くなると、腸管からのビタミンKの吸収量が低下します。そのため、高齢者はビタミンKをもう少し多く摂ったほうがよいという意見もあるようです。

 また、ビタミンKと相互作用が問題となるのは、血液をサラサラにして血栓の形成を予防する抗凝固薬「ワルファリンカリウム」を服用している人です。併用により、ワルファリンカリウムの作用が弱まるおそれがあります。そのため、この薬をのんでいる人は、納豆やクロレラなど、ビタミンKを含むサプリメントや食品との併用は避けることとされています。


 抗生物質の使用は、腸内細菌に影響を与えますから、ビタミンKが不足する可能性があります。抗生物質使用時には腸内細菌が作り出すビタミンB群やKの積極的摂取が必要といえるでしょう。