PMDD(月経前不快気分障害)

 月経に関連してイライラしたり精神的に不安定になる人の存在は、一般の人にも認識されていますが、この症状は月経中ではなく月経前に現れることが多く、最近では月経前症候群(PMS)として知られるようになりました。PMSは、「月経前の黄体期に精神症状(抑うつ、不安、焦燥など)や身体症状(易疲労感、浮腫、乳房圧痛など)を発現し、月経開始と共にそれらの症状が減退ないし消失するもの」と日本産婦人科学会で定義されています。

 月経前に何らかの心身の違和感を自覚する女性は、月経のある女性の約8割といわれています。しかも、その中には非常に重度の症状から、日常生活や対人関係に支障をきたす人の存在が知られるようになり、月経前不快気分障害(PMDD)という疾患が知られるようになってきました。PMDDは、著しい抑うつ気分、著しい不安、著しい情緒不安定、活動に対する興味の減退であり、月経前の約一週間を、うつ病症状、過眠、些細なことで激怒したり、異常な買い物をしたり、社会生活に支障をきたすことが問題です。そして、PMDDの患者は、月経がある女性の20人に1人の割合とされその多さに驚かされます。

 いつもはとても優しい母親が、月経前になると子供に暴力をふるったり、大切な試験や仕事の時に寝坊して起きられなかったり・・・。これらの症状から、離婚したり解雇されたりこの疾病の症状が、その人の人生に大きな影響を与えることがしられています。

 PMSの治療は、ピルや加味逍遥散のような漢方薬が使用されたりするのですが、現在、PMDDの治療については、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬として使用され、その服用は継続して服用するのではなく、原則としては、排卵から月経までの黄体期だけ服用する「間欠療法」が行われます。もちろん、月経がとても不順で、いつ月経が来るかわからないような人の場合は、間欠療法ではなく継続療法がされるようです。このSSRIの使用により、これら社会生活を営む上での支障となる症状が、大きく改善することが知られており、一定の期間症状が抑えられるようになれば、薬を減らしたり、やめることも可能で、決して月経がある限り継続して薬を使用しなければならないということではありません。

 月経前に不調で、月経がはじまると体調は戻るという方の場合、本来のあなたは、月経中のあなたなのです。月経前に、怒ったり暴力をふるったり、反社会的行動を起こしてしまうあなたはPMDDという病気なのです。

 PMSは、薬局で売られている漢方薬などで対応可能です。PMDDは、SSRIという医療用の薬での対応が必要です。診断がしっかりされれば、PMDDの治療は確立されています。是非、思い当たる場合は、受診前にPMDDの治療をした経験を確認してから治療経験のある精神科を受診してください。