オーストラリアの医療の視察で出かけました

 オーストラリアの医療の視察で出かけました。国が違えば、いろいろ違いがあり興味深いものがあります。薬剤師が見たオーストラリアのOTC薬の販売事情を紹介します。

 オーストラリアでは、薬はSchedule1~ 9の9区分と、これらに区分されない薬(Unscheduled Substances)に分けられています。
 OTC薬(市販薬)は、大きく三つのグループに分けられ、薬剤師しか販売できない薬(Schedule 3  Pharmacist Only Medicine)、薬局で販売する薬(Schedule 2  Pharmacy Medicine)、そしてスーパーマーケットなどで販売される薬(Unscheduled Substances)です。OTC薬は、一般の方が、自由に使用できる薬ですが、薬剤師の説明が重要な薬が、たくさんあります。

 薬剤師の説明を受けてからしか、購入できない薬があることは、日本もオーストラリアと同じです。あたりまえですが、オーストラリア人にとって、その使用について注意が必要な薬が、日本人に注意が必要でない、あるいは、その逆で、日本人に注意が必要な薬は、オーストラリア人にとっても注意が必要なはずです。しかし、薬剤師しか販売できない薬の種類は、日本とオーストラリアで、大きく異なるなっていて不思議な気持ちになりました。

 例えば、ゾビラックスという口唇ヘルペスの薬は、日本では、第一類の医薬品で、購入しようとする人が直接に手のとどかない所に置くことが義務づけられています。そしてその使用は、以前に口唇ヘルペスの診断を受けた事のある人に限られています。もちろん第一類の薬ですから、薬剤師からの文書での説明が義務づけられています。しばらく前までは、医師の指示のもとで使用されており、スイッチOTC薬として使用できるようになってそんなに時間がたっていないので、しばらく慎重に使用してもらおうということです。しかし、オーストラリアの薬局内にはリップクリームなどと一緒のコーナーに無造作に配置されていました。

 制酸剤、H2ブロッカーと呼ばれる胃酸の分泌を抑えるラニチジンの小さいパッケージ(大きなパッケージは薬局医薬品:日本では小包装も全て第一類医薬品)、解熱鎮痛薬のイブプロフェン(200㎎)の小包装(大きなパッケージは薬局医薬品:日本では小包装も全て指定第二類医薬品)解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン(500㎎)の小包装(大きなパッケージは薬局医薬品:日本では小包装も全て第二類医薬品)に分けられていてできるだけ消費者に必要な薬が手に渡りやすいようにされている現状があります。

 一方、オーストラリアで薬剤師しか販売できない薬としては、オルリスタント(脂肪の吸収を抑えるダイエット薬:日本ではその使用が許可さされていません。日本の食生活の違いと、肥満に対する治療の重要性の一端がうかがえます)プソイドエフェドリン(鼻づまりを抑える薬:日本では指定第二類医薬品、覚せい剤原料になります)などがあり、異なりがあります。

 このようなオーストラリアと日本の違いから、薬剤師として思うことは、生活者に必要な薬を少しでも手に入りやすくする。その一方で、安全性をどう担保するかという視点が大きく働いている現状が見えますが、日本では、少し違った事情がここに入ってきているように思えます。この薬を薬局で買えるようにしてしまったら、病院を受診しなくなる。その一方で、現在議論されている規制緩和は、どこでもなんでも買えるようにしてしまえばよい。日本の薬の分類には、生活者のためだけでなく、それを取り巻く人々のエゴが働いているのは、ちょっと悲しい問題です。