血尿

 日本人の間でたまに交わされる会話。「本当に仕事が忙しくて、血のおしっこが出たよ・・・」「血のおしっこが出るくらい、大変だったよ・・・」。尿に血が混じる。それは、体が発しているSOS。忙しかったからとか、そういった問題ではありません。40歳以上で、喫煙される方の、肉眼で見える血尿は泌尿器系の癌の確率が高いと言われています。

 血尿が出たけど、すぐ症状がなくなり。しかし、しばらくして、また血尿が出たので受診。でも、その時はすでに癌は手遅れの状態になっていた。そんな患者さんをたまに経験します。ですから、目で見てわかるような血尿が出たときには、「受診を勧めてほしい」と医師から指導を受けました。

 私たちは、痛いとかかゆいといった自覚症状があれば、その症状の改善のために受診したり、積極的に治療を受けたりします。しかし、体の異常は、いつも自覚症状があるとは限りません。だからこそ、自分の体が発する、体のSOSを聴きとることが大切です。

 尿に血が混じる。これは、時に大きなSOSです。必ず受診をすることが大切です。たとえ血液を固まりにくくする薬を飲んでいたとしても。血液を固まりにくくする薬は、出血を止まりにくくするだけであり、出血の原因にはなりません。どんな場合も、血尿はすぐ受診、と思ってください。

 でも、尿に血が混じっていても、必ずしも肉眼でわかるとは限りません。そこで、尿潜血反応を見る試験紙も、薬局では販売されていますから、時々体の声を聞くために、そんな試験紙を利用されることをお勧めします。

 尿潜血反応が陽性に出たときには、数回試して続くようなら受診を。あるいは、潜血反応が陽性になるとともに尿蛋白も陽性であれば、すぐに受診をされることをお勧めします。

 薬の中には、副作用として膀胱炎様症状を示すものがあります。シクロホスファミド(免疫抑制薬)、トラニラスト・エピナスチン・オキサトミド(抗アレルギー薬)、小柴胡湯・柴朴湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯などは、排尿痛や血尿などが知られています。薬で膀胱炎様症状が起こると思わなければ、医療関係者に伝えられることもなく、OTC薬を使用したりして発見が遅れてしまうかもしれません。

 また、これとは逆に、尿の色を赤く変化させる薬を服用した場合、血尿が出たと、誰にも言えず悩むことがあるかも知れません。色々悩んで、やっとの思いで「尿が赤く、血尿かも・・・」と医療関係者に伝えたら、それは薬の色ですから心配ないですよ。と、一言で片づけられて、最初からなぜ伝えてくれなかったのかと、怒りをぶつけられたこともありました。体の変化に気づいたら、悩まないで薬剤師に声かけを・・・。