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ヒハツ
北海道はバター醤油、東海地方はみそかつ味、近畿地方の関西だし醤油・・・カルビーポテトチップスの地域限定商品のラインナップ。今年1月には期間限定で、沖縄スパイス味のポテトチップスも販売されました。 その味と香りの正体は、沖縄産のシマトウガラシ、シークヮーサー、ヒバーチ。「じわっと辛くて、後味すっきり」とのふれこみでしたが、好みが分かれる微妙な味だったようです。ヒバーチは、東南アジア原産、コショウ科の植物「ヒハツモドキ」のこと。独特の甘い香りと辛味をもち、沖縄そばの薬味や中身汁(豚の内臓を煮込んだもの)などの香辛料として、古くから用いられてきました。
モドキではないほうの「ヒハツ」は、インド原産、同じくコショウ科の「インドナガコショウ(Indian long pepper)」のこと。名前の通り、細長い実をつけます。分類学上は別の植物ですが、両方を含めて「long pepper」と呼ぶことも多いようです(ここでも、ほぼ同じものとして扱います)。
ヒハツの辛味の成分は、ピペリン。トウガラシの辛味成分であるカプサイシンに比べると、辛味の強さは100分の1ほどですが、よい香りも有することから、食欲を増進させ、消化を促進する作用を期待して民間薬のように使われていたこともあるようです。
ヒハツはまた、「食べるカイロ」とも呼ばれるように、からだを温める働きがあります。カプサイシンのように汗が噴き出すという激しいものではなく、手足がじんわり温かくなるような、比較的おだやかな作用といわれています。
手足が冷えやすい方のために、ヒハツとショウガを加えた紅茶や黒酢風味の飲み物、血流をよくする働きをもつビタミンEやイチョウ葉、高麗人参などをヒハツと一緒に配合したサプリメントも発売されています。
ふだんの生活の中で摂るヒハツ(ピペリン)の量はごくわずか。大きな問題になることはまずないと思われますが、たくさん摂りすぎると、喘息の治療薬(テオフィリン)やてんかんの治療薬(フェニトイン)などの作用に影響があるという報告もあります。サプリメントを利用するときは、表示されている摂取目安量を守るようにしましょう。
正倉院のホームページで「宝物検索」をすると、奈良時代、唐から贈られたというヒハツの、現存する根と茎の写真を見ることができます。分類は、香薬。用途は、芳香性健胃薬など。昔の人にとっても、あの香りは魅力的だったのでしょうね。