病院を選ぶように、薬局も選んで下さい

くすりの飲みかたのギモン






Q1 クスリは水でのまなければいけないのですか。緑茶やコーヒー、牛乳、ビールでのんではダメ?

 たいていのクスリは、水でのめば早く、よく効くということです。本当は、ぬるま湯がベスト。180〜200ミリリットルのぬるま湯(コップ1杯程度)でのめば、クスリは、より溶けやすく、吸収も早い。ですから、その場にお湯があるならば、ぬるま湯でのむことをおすすめします。漢方薬を飲む場合は水も、あまり冷たいのは避けたほうがいいですね。

 ちなみに、アスピリンをコップ1杯の水、コーラ250ミリリットル、コップ2杯のビールのそれぞれでのみ、その吸収率を比較してみると、最初から水が一番。3時間後には効きめもピークに達するのに対し、コーラやビールは5時間たってようやくピークにたどりつくといった具合です。熱や痛みをかかえた人にとっては、一刻も早く効いてほしいもの、この差はやはり問題ですね。

 水以外のものでのむ場合、その飲み物に含まれるいろいろな成分が、クスリの吸収を遅らせる要因になることがあります。また、コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるカフェインやタンニン、ドリンク剤にもカフェイン、牛乳中のカルシウムやマグネシウム・・・・・・。いずれもクスリの成分とぶつかったり重なったりするおそれがあります。たとえば、私たちがよくのむかぜグスリには、カフェインが入っています。それを、コーヒーやお茶でのめば、カフェインが重なってしまいます。その上、1日何杯もコーヒーを飲むような人は、カフェインの量がふえる一方。一般的にはカフェインが1回約300ミリグラムを超えるとイライラしたり、頭痛をおぼえたりするといいます。もちろんこの作用は個人差がありますから、もっと少ないカフェインの量でこれらの作用が引き起こされる人もあります。

 市販の缶コーヒー1本に約74ミリグラムのカフェインが含まれています。これを目安に、ふだんからあまり飲みすぎませんように。

 また、牛乳の中のカルシウムやマグネシウムは、テトラサイクリン系の抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリン等)、ニューキノロン系の抗菌剤(ノルフロキサシン、シプロフロキサシン他)骨粗鬆症治療薬のビスホスフォネート系薬剤と相性が良すぎて、一緒にのむとクスリとカルシムなどがくっついてしまい、そのまま体の外に排出されてしまいます。すなわち、クスリの吸収がかなり妨げられてしまいます。反面、牛乳は胃腸を荒らしやすいクスリと一緒にのめば、胃への刺激を和らげてくれるというメリットも。

 さらに、グレープフルーツジュースは、クスリが体の中で作用を無くすように働きかける酵素の作用を弱めてしまうことが知られています。その結果、グレープフルーツジュースを飲んだり、グレープフルーツを食べた後、クスリを飲むとその作用が強くなりすぎてしまうものも色々知られていますから、このようなクスリを飲む時は、グレープフルーツを避けることが大切です。

このへんの知識があれば使い分けられますから他の飲み物で薬を飲みたい時は、必ず薬剤師に相談を。相談できない時は、とりあえずは水か湯ざましで。

Q2 ずっと水なしでクスリをのんでいます。何か問題になることがあるでしょうか?

 あります。一番の問題は、クスリがのどにつかえて溶け出し、粘膜を傷害して食道潰瘍になりかねないことです。特に、カプセル剤のカプセル部分はゼラチンでできているため、湿り気のある粘膜にくっつきやすい。適量の水ですばやく胃へ運んでやれば何でもないことなのに、病気を治すためのクスリで潰瘍をつくったのでは笑い話にもなりません。

 病院でよく使われる2号カプセル剤(長さが約2センチくらいの大きさのもの)2個を水なし、水25ミリリットル、水45ミリリットルでのんだ場合の実験報告を紹介しましょう。水なしでは5名中2人、45ミリリットルの水でも7名中2人が、それぞれカプセル1個ずつを食道にひっかけてしまいました。水25ミリリットルでのんだ4人は全員問題なし、という結果でしたから、必ずしもトラブルが起こるとは言えませんが、45ミリリットル(コップ4分の1杯)の水でものどにひっかかる可能性はあるということ。また、一度ひっかかってしまうと、それを胃へ落とすのにコップ何杯分もの水や、固形物をとる必要もあったそうです。

 やはり、クスリは十分な水でのみたいもの。一般に180〜200ミリリットルのコップ1杯分が適量といわれていますが、多すぎて一気にのめない、という人は3回ぐらいに分けてのんでください。ボルタレンなどの解熱鎮痛消炎剤や、アロプリノールなどの通風治療剤、センノシドなどの下剤、または抗生物質などは特にたっぷりの水でのんだほうがよいクスリです。

 ともあれ、クスリに水はつきもの。水なしでの習慣だけは、改めていただきたいと思います。

 ただ、病気などで水分を制限されている人。あるいは、寝る前のクスリをコップ一杯の水で飲むと夜中に何度もトイレに起きることになりつらい。という方は、最近は水なしか少量の水で飲めば良い薬もいろいろ(口崩壊錠、湿性錠といた薬:このような工夫を凝らした薬が後発医薬品に多くあります)できていますから、あまり水は飲めないとか、飲みたくない。といった場合も薬剤師に相談してください。

Q3 食前、食間、食後と飲み方の違いは何でしょう。その時間は必ず守らなければいけないのですか?

 食前とは、食事をとる約30分前のこと。食欲増進剤や漢方薬、吐き気を抑えるクスリは、この空腹時にのむと効果が高かったり、食欲増進剤は食前に飲めば食事の時にちょうど効果が出てくることになり、その作用がより効果的な時間に効くことになります。食間というのも空腹時ですが、こちらは食後2時間ぐらいが目安。消化性潰瘍治療剤がこの時間帯にのむクスリの代表格でしょう。食後は、食事をとった後約30分以内にのむこと。市販薬、処方薬を問わず、多くのクスリがこののみ方を指示されているはずです。

 なぜ、食後にのむクスリが多いのかというと、まず、食物が胃に残っているためにクスリで胃を荒らさなくてすむという点。そして、食事と関連づければ、のみ忘れもしにくいだろうというわけです。したがって、胃の荒れを防ぐことを第一目的にする場合は、きちんとした食事をとれないなら、クラッカー1枚、牛乳1本でもいい。何か少しでも胃に入っていれば、クスリによる胃への負担は軽くできます。食事と関連した服用方法を指示された場合には、食事が取れないときはどうしたらよいかを、クスリを受け取る時に確認しておきましょう。

 以上のように、食前、食間、食後の区別はクスリの効きめをよりよく発揮させると同時に、副作用を避ける意味も。守ったほうがいいでしょう。

 ただし、食後服用のクスリには、食物と一緒にとることでより吸収のよくなるものがある反面、食物が吸収を妨げているものもあります。たとえば、アスピリンやイブプロフェン、アセトアミノフェンといった解熱鎮痛消炎剤として使われる成分は、食物によって吸収が遅れ、効きめが低くなる場合も。つまり、本当は空腹時にのんだほうが効くのに、胃への副作用を重要視して食後服用にしているわけですね。実験でも、十分な量の水で空腹時にのんだアスピリンは、食後にのんだときより早くしかも多く吸収される、という報告があります。

 頭痛や歯痛、生理痛などで、すぐにでも痛みをとりたい人は、空腹時にのむことも考えられなくはないのですが、頭の痛みは治っても胃が痛んだのではお話になりません。やはり、何か少し食べてからのむことですね。ただし、アセトアミノフェンは空腹時にのんでも胃を荒らすことがほとんどなく、空腹時の使用が認められています。歯が痛くて食事もできない。そんな時の痛み止めとして市販薬を購入するとしたら、アセトアミノフェンだけを含む薬がお勧めということです。

 また、血圧降下剤のカプトプリルも、空腹のときにのんだほうが、食後すぐのむのと比べて、はるかに吸収がよく、生物学的利用率(吸収されてどのくらい体の中で利用されるかを表す)は、食後にのんだほうが食前より35〜50%も低く、血圧を下げる効果にも影響したという報告があります。

 日本では、1日3回毎食後という服用方法が患者さんに指示されています。これは、このクスリが血圧を下げることを目的として使用されるもので、長期間、のみ忘れをしないで、血圧をコントロールすることが必要になることから、のみ忘れに重点を置いた指示だと考えられます。したがって、いつも食後にのんでいる人が空腹時にのむと、カプトプリルの作用が強く現れる可能性もあるわけです。

 クスリと食事の関係、それが重要な意味を持つ場合があります。先にも記しましたが、食後にのむよう指示されたときは、食事をとらないときはどうしらよいか、その対応策を確認してください。

 一方、クスリののみ方には、食事時間に関係なく一定の間隔でのんだほうがよりクスリもあります。

 たとえば、ぜんぞく、てんかん、不整脈のクスリ、それに抗生物質(時間依存性の抗生物質:菌と薬剤の接触時間が長いことが効果を発揮する上で重要なグループのもの)などがそうです。これらは、血中の濃度をできるだけ一定に保つことによって効果を上げるタイプ。そのために設定された服用間隔を守ることで、十分な効果が得られるようになります。といっても、仕事や学校の関係で人によっては守りにくい時間帯があるかもしれません。

 そういう場合も医師に相談してください。その人の生活サイクルに合わせて、ムリなく服用できるよう、クスリの変更や時間のアドバイスなどいろいろ配慮してくれると思います。

Q4 いつものんでいるクスリをのみ忘れたときは、気がついた時点でのむべき?それとも次回まで待つ?

 クスリによって対処法も違いますが、一般的には気がついたときにのむか、次にのむ時間が迫っていればそれまで待ち、1回分だけのむ、ということでいいと思います。

 かぜで頭が痛かったり熱があるときに、市販のかぜグスリをのんだとしますね。1日3回食後服用ということで、まず朝食後に1回のんだ。しかし、昼食のときにはすっかり忘れて、気がついたらもう3時。そんな時、頭痛や熱は、どうでしょうか。お昼のクスリも症状がおさまったために忘れたのであれば、このような市販薬の対症療法薬とはサヨナラです。

 一方、かぜで抗生物質をもらい6時間おきにのむよう指示されたような場合、のみ忘れに気づいたらすぐ飲んだほうがよい場合がおおいでしょう。しかし、子供に抗生物質をのませて、次に深夜にのむ時間がきたとします。そのときに、病人がぐっすり眠っている場合、起こしてまでのませる必要はありません。

 しかし1日を4等分してのむように指示されることもありますから、のむのが覚醒時間帯にないときの対応を確かめておくことが大切です。

 注意しなければならないのは、薬物療法を始めたばかりで、医師が治療方針決定のため、特に注意深くその効果を観察しているときの、のみ忘れです。

 また、心臓の弁置換(ちかん)手術を受けた人や血栓(けっせん)症、塞栓(そくせん)症の治療でワルファリン(抗凝血(ぎょうけつ)剤)などをのんでいる人。心臓の病気でジゴキシンなどをのんでいる人。てんかんの治療でフェニトインなどをのんでいる人。甲状腺ホルモン剤等をのんでいる人。以上の人たちはまず、のみ忘れしないことが大切。もし、忘れても、次に2回分の量をのまないこと。一度に2回分をのんで血中濃度が上がりすぎて、重大な中毒症状を起こすことがあるかもしれません。もしのみ忘れたら、医師または薬剤師のアドバイスを受けてください。

 さらに、慢性病などで常にクスリをのんでいる人が新しいクスリを試しているときや、検査の日にのみ忘れたら------。必ず、のみ忘れたことを医師に伝えてください。でないと、医師はクスリの効きめに疑問をもち、もっと強いクスリを処方したり、用量を多くしてしまうかもしれません。

Q5 高血圧で毎日何種類かのクスリをのみ始めましたが、のみ忘れしない方法があれば教えてください。

 7日でなくなるはずのクスリが何故か8日目にも残っていた、なんていう経験はどなたにもあるでしょう。のみ忘れていたことさえ気づかなかった人ですね。これはやはり、問題。忘れないための方法としては、クスリをもらったらすぐに1回分ずつを袋に詰め、表に“○月△日分”と明記する。あるいは、薬剤師に「ワンドーズ・パッケージにしてくれますか」と言ってみてください。OKなら、1回分ずつをパックして渡してくれるでしょう。

 女性の場合、おしゃれなピルケースにクスリを移し入れ、服用時間を楽しく演出するのもいいですね。

 また、自分ののんでいるクスリの一つ一つの名前や働きをよく知ることも、のみ忘れ防止につながります。高血圧のあなたは、これからのみ始めるクスリについて、ご存知ですか? 何という商品名で、どんな成分があり、どういう効果をあらわすクスリなのか。ちょっと本で調べると、どれもこれも血圧を下げるクスリだなんてことがわかるはずです。では、なぜ、血圧を下げるものばかりこんなに必要なのでしょう。

 そんな疑問がわいてきたら、さっそく医師や薬剤師に聞いてください。

 答えは、同じ血圧を下げるクスリでも、からだの中で作用する仕組みは皆違う、です。血圧を下げるために、いろいろな仕組みでクスリが働き、その総合力によって正常な血圧を保てるのです。理由がわかってみれば、これらのクスリがあなたにとっていかに大切なものか、痛感できるのではないでしょうか。長くつき合っていくクスリの一つ一つに納得がいき、なくてはならないものだと思えれば、のみ忘れは防げるはずです。

 他にも、クスリをのむ時間に腕時計のベルが鳴るようにしたり、同じ職場の同じ慢性病の人と注意し合ったりカレンダーを利用して書き込んだりと、その人なりの工夫をしているようです。あなたも、自分のクスリを知り、クスリと“親しく”なることから始めてみてください。

 クスリをのむ人が認知症や物忘れの激しいお年寄りの場合は、家族などのしっかりした管理が必要です。1回に1日分をのんでしまったりすると大変ですから、見えるところにはクスリを置かないほうがいいですね。家族中が協力し理解を深めることが、お年寄りの安全につながります。

Q6 クスリの量は大人も子供も同じ? 体格差は? 小錦関と我々では違うと思いますが・・・。
     また男女差は?

 市販薬では15歳以上を大人とし、15歳未満11歳以上とか、11歳未満6歳以上というふうに、年齢層をいくつかに分けて用量を定めています。つまり、大人と子供ではクスリの量も違うわけです。効き方のゆるやかな市販薬なら、この程度の分け方で問題はありません。

 しかし、病院でもらうクスリは、体格や体重、病状などをちゃんと考慮して出されます。日本人の場合、体重50〜60キログラムの人を標準として用量が決められています。小錦関と我々では200キロ近くの差がありますから、クスリの量も違うかもしれません。ただ、体重とからだの機能は正比例するわけではないので、必ずしも大きいから用量も多い、とは断言できません。疑問があれば医師か薬剤師に聞いてみてください。

 男女差は、女性には少なめがいいという医師もいるし、あまり関係ないという医師もいてまちまち。年齢的には、お年寄りに要注意。クスリを代謝する肝臓や、排泄する腎臓の機能が衰えているため、クスリがからだの中にたくさん残って効きすぎるきらいがあります。それで副作用が出ては大変ですから、ふつうは大人用量の3分の1から2分の1くらいの量から始め、様子を見ながら徐々にふやしいくのがいい、といわれています。

 さらに、子供の薬用量は主に体表面積から割り出し、クスリの種類によっても増減されます。よく、小さな子が熱を出したりしたときに、大人ののむ市販のかぜグスリを少しだけ与える母親がいますが、やめてください。かぜグスリに入っている成分によっては、小児に与えないほうがよいものもあります。からだのしくみが完成していない、特に乳幼児には小児用のクスリを与えましょう。

 子供は大人のミニチュア版ではありません。どうぞ一言相談を。

Q7 うちには老人が2人いて、それぞれがたくさんのクスリをのんでいます。家族としての注意点は?

 人は誰でも年をとると、からだのあちこちに支障が出てきます。歯は入れ歯が必要になり、眼は白内障(はくないしょう)や緑内障(りょくないしょう)で見えにくい。耳は聞こえにくくなるし、記憶力も減退。内臓の働きも衰えが目立ってきます。こうなると、歯科、眼科、内科と通い歩くことが多くなり、クスリも多くなります。

 一般医療と老人保健法の適用を受けた患者の一件あたりの併用薬剤数は、平成17年では、老人4.63であるのに対して一般は3.54となっています。これは、一件あたりの併用薬剤数ですから、いろいろな科を複数受診すればどんどん併用されるクスリが増えることになります。通う病院が違えば、同じような効果のクスリが処方されることもあり、クスリの重複や相互作用で副作用の発生率が高くなります。眼科でもらうクスリと内科でもらうクスリは、関係ないから大丈夫だろう? そんなことはありません。口からのんだクスリは、胃から腸へいき、そこで血液中に吸収されて肝臓へ。さらに心臓の右心房から右心室へいって肺をめぐり、再び心臓の左心房、左心室を通って全身に送り込まれていきます。

 クスリの効きめは、この全身の血管で運ばれて行った先々の作用部位で発揮されます。このとき、目的とする作用だけでなく、不都合な作用をすることもあり、目的とする作用が主作用。目的としない不都合な作用を副作用と呼びます。そして、同時にのんだクスリ同士は、お互いにからだの中で影響しあい、主作用が弱くなったり、強くなりすぎたり、悪い影響(副作用)を及ぼす可能性があるのです。そこで、診察を受けるときは、他にどんなクスリをのんでいるかを、必ず医師に伝えてください。服用中のクスリについてはおクスリ手帳に記載してもらい、病院や薬局・ドラッグストアに行く時には必ず手帳を持参し医師や薬剤師に確認してもらう習慣をつけて下さい。

 ドラッグストアの薬剤師におクスリ手帳を見せるのは、病院で処方された医療用のクスリと市販のクスリとが影響しあったり、医療用のクスリで副作用が出ているのを副作用と気づかず、副作用の症状を緩和するために市販薬を購入しようとしているかも知れないからです。薬局でお年寄りにのませるクスリを買うときも、おクスリ手帳をもっていってください。そして、そこの薬剤師に相談して、今のんでいるクスリに影響を与えない成分のものを、さらに今併発している他の病気に悪影響を与えないものを選んでもらいましょう。

 クスリののみ忘れ、のみ間違いにも要注意。クスリをのむ時間にひと声かけてあげるだけでも、かなり効果があると思います。ほとんど寝たきり状態のお年寄りにクスリをのませるときは、必ず上体を起こしてのませ、クスリが口の中に残ったり食道に留まったりしないようにします。のみ下しにくいような形のクスリや、散剤(粉グスリ)などは、はじめに少し水を含ませてから与えるとスムーズにいきます。

Q8 いろいろな形のクスリがありますが、それぞれの効き方やのみ方の違いについて説明してください。

 クスリの形を剤形(ざいけい)といいます。剤形は内用(ないよう)剤、外用(がいよう)剤、注射剤の3つに大別できますが、一番種類の多いのは内用剤。口からのむタイプのクスリです。外用剤は皮膚や粘膜から体内に吸収し、局所的あるいは全身的な効果を期待するクスリ。注射剤は注射針を通して、直接体内に注入するクスリ。効きめは、この注射剤が最も早く出ます。

 内用剤と外用剤には、それぞれにいろいろな剤形のものがあります。主な種類を次にあげてみましょう。まず、内用剤から。
●散剤・・・・粉グスリのこと。古くからおなじみです。量を微妙に調節しやすいのが特徴。水グスリの次に吸収されやすい(効きめが早い)のもメリットでしょう。
●顆粒剤・・・・ツブ状にしたクスリ。散剤のように飛び散る心配はなく、保存性にもすぐれています。ただ、入れ歯の人は歯の間にはさまったりしてのみにくいかもしれません。また、見た目は顆粒剤と同じですが、水に溶かして用いるドライシロップ剤もあります。
●丸剤・・・・球状のクスリ。これも古くからあるタイプで『正露丸』は、すぐに思い浮かぶでしょう。
●液剤・・・・水グスリのこと。内用剤の中で一番吸収の早いタイプ。びんをよく振り、コップなどに移し入れてのむのがコツです。保存性は低く、一度口を開けてしまったものなら、シロップ剤などで約10日〜1ヶ月くらいが有効期間と考えましょう。
●カプセル剤・・・・粉末や顆粒のクスリを、ゼラチンでできた硬いカプセルに入れた硬カプセル剤と、弾力のある柔らかいゼラチンのなかにクスリを封じ込めた軟カプセル剤があります。軟カプセル剤は、液体のものをカプセルにできるメリットがあります。ゼラチンは食道粘膜にくっつきやすいので、必ず十分な水かぬるめのお湯でのむこと。カプセルを外しての服用は避けましょう。
●錠剤・・・・クスリを圧縮して一定の形にしたもの。裸錠とコーティング錠があり、後者にはクスリの苦みや臭いを消したり、成分の変質を防ぐために外側を糖類やフィルムでコートした糖衣錠、フィルムコーティング錠、胃で溶けないで腸で溶けるように工夫された腸溶剤があります。また、作用が長く続くように工夫された錠剤(スパスタブ型、グラデュメット型など)もあります。錠剤はつぶすとせっかくの工夫が無駄になってしまうものもあります。つぶしたりする場合には、医師または薬剤師に相談してください。
●バッカル剤・舌下剤・・・・バッカル剤は頬の内側と歯茎(はぐき)の間に、舌(ぜっ)下(か)剤は舌の裏側に置いて、そこの粘膜から血液中に直接的に吸収させるクスリ。舌下錠は速効性があるので、心臓発作などの急を要する場合に使われます。


 外用剤には、錠剤、カプセル剤、液剤など内用剤と見た目は同じタイプのものの他、次のような形があります。
●軟膏剤・クリーム剤・・・・半固形の、皮膚や粘膜に直接塗るクスリ。混ぜる基剤によって、軟膏とクリームに分けられます。患部の状態に応じて両者が使い分けられます。
●パップ剤・・・・粉末剤と精油成分を合わせて泥状にしたクスリ、湿布によく利用されます。
●テープ剤・貼付剤・・・・クスリを塗ったテープ状のタイプ。患部や患部の近くの皮膚にはりつけて、体内へ吸収させます。消炎鎮痛用が多いですが、最近は、貼った所の局所的な作用を期待したものではなく、心臓の発作予防や咳のクスリなど全身的な作用を期待して使われるものも出てきました。また、見た目は錠剤のようですが、アフタ性口内炎の患部に貼りつけるものなどがあります。
●坐剤・・・・肛門や膣に挿入し、そこで溶かして粘膜から吸収させるもの。局所的、全身的に効くものの両方があります。体温で溶けるタイプと、水分を吸収して溶けるタイプがあります。体温で溶けるタイプは、35度くらいになると溶けてしまうので冷蔵庫で、食べ物と区別して保管するといいでしょう。
●点眼剤・眼軟膏・点鼻剤・点耳剤・・・・点眼(てんがん)剤は液剤を滴下するもの。眼軟膏は軟膏剤を下まぶたの内側に入れて、まぶたの上から軽くマッサージするもの。点(てん)鼻(び)剤は、液剤を鼻に滴下するもの。点(てん)耳(じ)剤は、液剤を耳に滴下するものです。
●噴霧剤・・・・噴霧器に入った液剤などを鼻腔や口腔(こうくう)に噴霧して使うクスリ。前述の点鼻剤にもこの形がありますが、他に、カプセルを噴霧器にセットして用いるタイプのものもあります。カプセルの形をしていますので、のみグスリと間違わないよう注意してください。ぜんそくやアレルギー、鎮咳去痰などにも利用される剤形です。